タイトル「手を取って歩こう」

 白いキツネ
 そのキツネは木の葉の舞い散る季節、泣いていた。ワンワンと言うよりもシクシクと。
「なんで? なんで?」
 大粒の涙がクリクリと可愛い瞳からこぼれ落ちる。
「俺、なんにも悪いことしてないのにぃぃ………」
 悪いことしてないのに、いぢめられた。
 最初はそれがどうしてか分からなかった。だけど大きくなる毎に徐々に分かっていった。それは俺がみんなと違うから。みんなと違って色を持たない生き物だからだ。



 その日はいつ来るのだろう。
 俺は待った。ひたすら待った。
 その日。それは俺がみんなと同じになる日だ。
「ねぇねぇ、俺はいつになったらみんなとおんなじになれると思う?」
「………」
 風になびいている花に聞いてみる。だけど花はなかなか返事を返してくれない。
「ちぇっ。お前もみんなと同じか。俺がみんなと同じように木の葉色にならなきゃ答えてくれないつもりだな?」
「………」
「いいよーだっ!」
 ブンッ! と鼻で花を弾いてそっぽを向く。所詮花は花。いくら話しかけても答えを返してくれないことは薄々分かっていた。
 お前たちは最初から色を持ってるから、僕の気持ちなんて全然分かってくれないんだ。だから一度も俺の声かけに返事を返してくれないんだ。
 ちょっと悲しかった。だけどこればっかりはどうしようもない。色を持たないキツネ・コナは寂しそうに木の葉の舞い散る季節、独りぼっちで森を彷徨うようにうろついていた。

 木の葉の舞い散る季節。やたらと大きくて木の葉色の無作法な住人たちは眠りにつこうとしていた。だけどコナは眠くない。と言うことは、この季節もちゃんと生きていられることを意味する。コナはちょっと嬉しくて、これからどうしようかと考えていた。
「俺と同じ生き物はいるのかな……。いるとしたら話してみたいな………」
 だけどなかなか食べ物以外出会える生き物はいなかった。そうこうしている内にも回りの景色は変わっていった。
「あれっ……………」
 自分の色が目立たない。そんな季節がやってきた。
「白いっ……………………」
 一面白さが際立っていた。何をどうすればこうなるのかが皆目分からなかったコナだが、自分が目立たなくなったのには嬉しさを隠せなかった。
 ピョンピョン撥ねて嬉しさを体で表現する。だけどそれを見てくれる誰かは、いてくれなかった。けどそんなことはどうでもいい。とにかく嬉しいのだ。自分が目立たない日がきたのが。
「すっごぉぉいっ!! 俺、全然分かんなくなってるっっ!!!」
 これなら馬鹿にされないぞっ。獲物も捕らえられるっ。これは自分が生きていくには絶好調な季節なのだと直感でそう思った。すべてが白い。嬉しい。俺の天下っ!!
 コナはピョンピョンと飛び回った。だけどそこに突如として現れた生き物がいた。
「ぁ……あれっ……………」
 その生き物は、まさにコナの獲物だった。白くて長い耳に、飛躍する豊かな脚と真ん丸で可愛らしいシッポ。ピクピクと揺れる耳は、コナを見て大きく折れた。
「ぁ…あのぉ………………」
 ビクビクとしている。けどその獲物はコナより大きかった。
「あんた、誰? てか何者?」
「ぁ…俺? 俺は……………」
 キツネだと言おうとして躊躇した。
「………俺は、コナ」
「コナ?」
「うんっ」
「白いけど……俺と同じなの?」
「ちょっと違うかも。だって俺、長い耳もないし、あんたみたいにピョンピョン撥ねられない」
「………今さっき撥ねてた…よね?」
「でもあんたみたいにいつも撥ねていられるわけじゃないんだ」
「じゃ、ウサギじゃないんだ」
「うん」
「じゃ、なに?」
「………言っても逃げないって約束してくれたら言う」
「ぇ………」
 とたんに相手は、さっきの怖々した顔になってすっかり逃げ腰になる。
「逃げないで、俺」
「まっ…待って。まさかのまさか、そんな顔してオオカミとか言わないよね?」
「オオカミ? ちっがーうっ。ブッブー」
「じゃ、なに?」
「ぁ……っと…………キ…ツネ?」
「えっ?!」
「あっ! でも俺、あんた食べないしっ!」
「うそだ〜っ!」
「ほっんとっ! ほらっ、俺、あんたよりちっちゃいじゃん?! だから、ねっ? 大丈夫だからっ!」
「うっそ!」
 俺が言い訳してる間にも白ウサギの彼はピョンッ! と大きく後ずさって震えていた。俺より大きいのに。
「俺はさっ! あんたと仲良くなりたいんだっ!」
「嫌だよっ! 食べられちゃうしっ!」
「食べないって! 言っただろっ?!」
「それはウソだっ!」
「ウソをつくのはオオカミって教わってないわけっ?!」
「教わってるけどっ!」
「じゃあっ! いい加減俺の言うこと信じてよっ!」
「嫌だよっ! ガブッってされたら俺、逃げられないじゃんっ!」
「だからしないってばっ! 俺、おんなじ白い友達欲しいんだっ! いっつも仲間外れで独りぼっちで寂しくって………。だから俺………!」
 必死になって相手に自分の気持ちを伝えた。そしたら耳を折って震えていたウサギが真っ赤な目を真ん丸にして耳をピンッとまっすぐに立てた。ヒクヒクと鼻をヒクつかせて探るようにこっちを見てくる。俺は「本当だぞっ?!」って気持ちでまっすぐに相手を見つめた。
「…………ホント?」
「ホントっ!」
「…………ウソつかない?」
「ウソつかないっ! だって俺、俺と同じ色した友達探してるんだもんっ!」
「………………じゃ……信じるっ………」
「ほんとっ?!」
「………うん」
「やったぁっ!! 俺、やっと友達出来たーっ!」
 ピョンピョンと、そいつと同じように跳びはねたけどやっぱり違うくて、ちょっと悔しい。本当の本当はもっと高く飛びたかったんだ。嬉しさをちゃんと形にしたくてさ。


 ひとしきり跳びはねて疲れて雪の上にへたり込む。ゼイゼイ言ってると、見かねたウサギがオドオドしながらも近づいてきてくれた。
「………大丈夫?」
「大丈夫。俺、初めておんなじ色の奴見つけてテンション上がっちゃってるだけだから………」
「……………本当っぽいね」
「本当だよっ」
「…………俺の名はリュック。小さい時にはうまく歩けなくて仲間におんぶされてたからリュックサックのリュックなんだ。今だってうまく歩けないから警戒心ばっかついちゃって……。相手のこと信じるまでに時間かかっちゃってごめんね?」
「いいんだ。友達になってくれてマジ嬉しい。俺、今まで仲間には相手にしてもらえなくていっつも独りぼっちだったから、どうしたらいいのかが実はよく分かってないんだ」
 はははっ…と、ごまかしぎみに笑うと相手も屈託なく笑ってくれた。こうして俺たちふたりは、本当なら食う食われるの仲なのに友達になった。





「なぁ」
「………ん?」
「木の実の匂いしないか?」
「…………する」
「食べたくない?」
「コナ、木の実なんて食べるの?」
「うん。俺、どっちかって言えば草食だから」
「へぇ。キツネなのに珍しいね」
「お前こそ。俺といて仲間にいぢめられないか?」
「てか俺、最初から疎ましがられてたから大丈夫。すっかり白い目で見られてる」
 ふふふっ…と笑うリュックに何も言えなくなる。コナは匂いのするほうに歩いて行くと天を仰いだ。
「あった」
 見上げたそこには寒空の中、奇跡的に紫色の実がパックリと口を開いて甘い匂いを漂わせていた。
「アケビだ……。やったぁ………!」
 木をよじ登ると言うよりもピョンピョン撥ねてアケビを手に入れる。三つあった全部を手に取るとリュックの待つ日だまりに急いで帰る。
「リュック。アケビだったよ」
「えっ、この季節それってすごいんじゃないっ?!」
「まあな。でもお前、もしかして分かってた?」
「………うん。何となくね。甘い匂いがしたからアケビかなって思ってた」
「何だよ。それなら最初っからお前が取ってくれば良かったのに」
 言いながら三つの内ひとつをリュックに手渡すと、自分もひとつ口にする。そうしておいて残りのひとつは保存用にかたわらに置くのがコナだった。
「いいか。このひとつは、もしもの時のため用だからな?」
「分かってるよ。それよりコナ、俺たちこんなに一緒にいるんなら、一緒に住まないか?」
「えっ?」
「キツネってさ、本当は穴を掘って生活するんだろ?」
「ぅ…うん、まぁ……」
「俺たちウサギもそうなんだ」
「ぇ…そうなんだ」
「うん。だからさ、一緒に暮らそうよ」
「………いいのか?」
「何が?」
「一緒に暮らしても」
「………いいよ? でも俺のほうが大きいから迷惑かけるかもしれないけど………」
「そ……んなことないっ! 俺っ、………リュックのこと好きだしっ!」
「俺もコナのこと好きだよ? だから……一緒に暮らそ?」
「ぅ……うんっ…………」
 何と言っていいのか…………。
 ジワジワと込み上げてくる幸せがコナの心を満たしていった。それは色にすれば桃色がかった淡い色で、とても幸福な感覚をもたらせてくれた。
「俺………………」
「ん?」
「何だか今、とっても満たされてるんだけど」
「それは奇遇だな。実は俺もだよ」
「なんだ、お前もかよ」
「うん、俺もだよ。コナと一緒で嬉しいな」
「それは俺もだな。俺もリュックと一緒でマジ嬉しいっ。俺……、俺、リュックと一緒で幸せだなってマジで思えるっ!」
 ギュッと相手を抱き締めて、遠い死ぬほど暑い日を呼び起こしてみる。
「暑い日も寒い日も、種が違っても俺たちはいつも一緒だ。だって俺たち、こんなに好き合ってるんだもんっ! なっ?!」
「うんっ」
 しっかりした返事をもらえて心強くなる。コナはリュックの存在が自分のいる価値でもあるかのように思えていた。



 コナはリュックを自分のねぐらに案内した。そこはちょうど地面が段差になっていて、赤い土が剥き出しになっている場所だった。いくつもある横穴のひとつ。その前にコナは止まった。
「ここ、俺ん家」
「え……」
「だーいじょうぶだって。俺たちは、いつも単独行動。もう母ちゃんとは離れて暮らしてるし」
「そっか……。俺たちは基本家族単位だからさ、友達は、けして仲間でも呼んじゃいけないことなってんだ」
「ふーん。俺、独りぼっちは寂しいから、そっちのほうに憧れるな」
「憧れなくていいよ。狭いし、ごはんの時とかケンカばっかだし。結構殺伐としてんだよ?」
「俺たちにはエリアってものがあるからさ。ある程度おっきくなると、母ちゃんは俺たちをエリア外に放すんだ。そしたら、もうサヨウナラ。その日から単独行動が待ってるわけ」
「へー」
「俺、ちっちゃいじゃん? あんまり肉とか食べないからだと思う」
「白いからじゃなくて?」
「まっ、白いから獲物が捕まえられない。よって死、って感じで俺みたいな奴は早々にいなくなるんだと思う」
「でもまだいるよね? じゃ。これからは、そんなこと言わない」
「そんなこと?」
「よって死…とか」
「……………うん、分かった。でもさ」
「なに?」
 まだ何か言うことあるのか? と、ちょっと怪訝な顔をするリュックに対し、コナは相手を見上げてから正面のわが家を見つめるとボソッと口を開いた。
「この家、もうちょっと広げないとな」
「え?」
「お前、おっきいから」
 クスッと笑われたリュックは、申し訳なさそうに身を縮めると「………すみませんっ」と言ったのだった。


 寒い冬に暖かい家。始まった共同生活は快適だった。ふたりして抱き合って眠る暖かさったらなかった。食料も探しにくい季節だから、こうして日がな一日丸まってることもあった。
「ふたりしてこうやってると、すっげーあったかいな」
「うん。……コナのこのシッポ。揺れるたびにフサフサして綺麗だよ」
「そんなことあるもんかっ。お前こそ、その長い耳がピクピクするたびに俺、ドキドキするんだけど」
「なんで?」
「なんでだろう……」
 コナは自分の胸に手を当てると首を傾げた。


「ごはん」
「奇跡のあけびはもうないよ?」
「うん。だから捕りに行ってくる」
 もごもごとベッドから這い出すと身支度を整えるコナ。それを見ながら耳をピクピクとさせていたリュックが腹ばいになりながらコナを見上げた。
「何捕りに行くの? 動く物? それとも木の実?」
「分かんない。今は何にもないもんね」
「待って。やっぱり俺も行く」
 ピョンッと跳ね上がると勢いよくベッドから飛び出すリュック。ふたりして白銀の世界に出るとキラキラと暖かい日差しが降り注いでいた。
「雪が解けかかってる」
「もうすぐまた食べ物が増えるね」
「そしたらふたりでピクニックに行こ」
「うん。今日もピクニックみたいなものだけどね」
「今日は違うよ。だってまだ寒いもん」
「暖かいばっかがピクニックとか言わないよ?」
「うん。でも今日は違う。今日は特別だから」
「特別?」
「だって初めてのデートじゃん」
「デート? デートって何?」
「好きな人とこうして一緒に出歩くこと」
「そうなんだ」
「うん」
「…それって楽しい食事会でもあるんだよね?」
「何かが見つかればね」
 ふふふっ…と笑うコナに合わせてリュックも声を立てて笑う。ふたりは手に手を取って森の中に入っていった。
「今はまだクマ野郎も毒蛇も眠ってるから、ある意味俺らの天国だな」
「うん。でも食べ物見つからなかったら最悪だね」
「そしたら最終手段だ。木の蜜を取って帰ろう」
「木の蜜? クマみたいだね」
「うん。クマ野郎のやってるの見て覚えた。あいつらがガサガサやってたところに行けば、新しい蜜がまた出てるから」
「コナ、頭いいね」
「俺が頭いいんじゃないよ。クマ野郎が頭いいんだ」
「違うよ。クマはクマのするべきことをしてただけ。それを頂戴しようとする考えが沸いたコナが凄いってこと。そんなこと誰も思いつかないから」
「………それだけ腹が減ってたってことなんだ。案外誰でもやってるかもしれないよ?」
「そうかな」
「分かんないけど」
「行こ?」
「………うん」
 リュックに引っ張られて少し雪解けした山道を歩く。どんどん山の中に行くと、やっぱり雪は積もっていて、コナとリュックは道を探して歩いた。
「やっぱり何もないね」
「すっかりクマ野郎に食い尽くされてるって感じだな」
「じゃあやっぱり蜜でも捕りに行く?」
「うん。だけど脇道は駄目だ」
「なんで?」
「罠があるかもしんないから」
「あ、それ聞いたことある。あれにかかるともう駄目だって」
「リュックは毛皮と肉、俺は毛皮だけ剥がされちゃうんだぜ? 残酷だろ?」
「ぅ…うん……。俺、そうなりたくないっ」
「だったらあんまり奥には入んない。分かった?」
「うん」
 蜜を捕るためにもっと奥まで歩いていくと、途中で何かが道を横切った。
「!!」
「!」
 ふたりして身構えると道の真ん中には一匹のウサギがいた。そのウサギはリュックと同じくらいの大きさで、ふたりを見つけるとギクッとして身を反らせた。
「…………ぇ?」
「ぁ…」
 相手のウサギは、まずリュックを見つけてから隣のコナを見つけて不思議な生き物を見る目付きで見つめると、キツネだと知ってピョン! と撥ねて距離をおいた。
「リュック、逃げろっ! こいつキツネじゃないかっ?!」
「ぅ…うーん………」
「リュックっ!!」
「タイチ。彼は心配ないよ」
「心配ないわけないだろっ?! キツネだぞっ?!」
「キツネだけど心配ないんだ」
「………お前は馬鹿かっ! それとも脅されてるのかっ?!」
「いや、そうじゃなくて………。俺たち今一緒に暮らしてるんだ」
「……………」
「コナはっ……。ぁ、彼はコナ。俺たちと一緒の真っ白さんなんだ」
「馬鹿かっ?! 馬鹿だろ、お前っ! 俺たちが白いのは雪の時だけだ。季節が変われば色も変わるんだぞっ?! それに何だ、その真っ白さんって! 同じ色だから食われないとか思ってるんじゃないだろうなっ! だとしたら、やってらんないぜっ!」
 ピョンッ! ともう一度後ろに撥ねると、タタタッ! と走っていってこっちを振り返る。
「お前なんてもう仲間じゃないんだからなっ! 戻ってくるんじゃないぞっ!!」
 凄い剣幕で言い放つと、後はもう一刻も早く逃げなくちゃと言う勢いでいなくなってしまった。残ったふたりは、その姿が見えなくなるまで何も言えずにいた。

「ごめん………」
「何が?」
「何か仲間割れさせちゃったみたいだな」
「そんなことないよ。俺が家を出てきた時点で、みんなとはお別れしてるんだから」
「そう…なのか?」
「遅かれ早かれみんな別れていかなくちゃならないんだ。そんなことはあいつだって分かっているのに………」
「きっと心配してるんだ」
「でも選択するのは俺の自由だ」
「……………後悔」
「してないよ?」
「いいのか?」
「言っただろ? でも、季節が変わると色が変わるってのは初耳だな」
「………」
「ごめん。本当は一回経験済みだ。俺は前の季節には枯れ葉色だった。でもそれ以外の色になったことはない」
「………………あのさ」
「……」
「俺、色が変わる生き物って聞いたことあるけど見たことはないんだ。出来ればこれからも一緒にいて、その体の色が変わるのを…見せてくれないか?」
「…………コナ、白い友達が欲しいって言ったじゃん。俺、寒い時しかコナと一緒の色になれないよ?」
「うん」
「それでもいいの?」
「言ったじゃん、いいんだってばっ。俺、リュックが俺といてくれるって選択してくれただけで嬉しい。最初はあんなに脅えてたのに」
 ニッと笑うと、心細げにしていたリュックもやっとニッコリと笑った。そしてコナに抱き着きながら小さな丸いしっぽをピクピクと揺らしたのだった。
「コナと初めて会った時、何だか分からなかった。でもヒラヒラ揺れる白いしっぽが凄く綺麗で……。今でもそこが一番好きっ」
「え、そこだけ?」
「そこだけじゃないよっ?! ぜーんぶ好きだけど、特にそこが印象的ってこと!」
「俺は………ピクピクよく動く白くて長い耳が好き。俺にはないものだもの」
「それだけ?」
「それだけじゃないって分かってるくせに」
 ないものねだりじゃないけれど、ギュッと抱き締め合うとお互いの愛を確かめる。コナはリュックの首に手を回すとグイッと引き寄せて、その唇にチュッとキスをした。するとリュックも同じようにコナにチュッとキスを返してくる。それを何度も繰り返している内に二人のお腹が同時にギュルルッ〜と鳴った。
「はははっ…!」
「おかしいねっ」
 クスクス笑うリュックに「蜜、捕りに行こ」と手を取るコナ。
「俺、リュックが黄色とかになったら笑うよ?」
「え、何の話?」
「だから白と枯れ葉色以外に、ってこと」
「そりゃないよっ」
「ほーんとのほんとに〜っ?!」
「う…うーん。たぶんね」
 ちょっと自信なさげに言うリュックに、それをからかうようにのぞき込むコナ。ふたりはまた森を歩きだした。蜜のある場所目指して。
終わり
タイトル「手を取って歩こう」