タイトル「現代寺子屋事情 -綱引き駆け引きパラダイス-」

@始め
 ある年・初夏・晴天。
 ここBASARA学園では、新入生の歓迎会と生徒同士の親睦を兼ねた校内「綱引き合戦」が行われていた。
 一年・二年・三年と各学年ごとに代表が決まった時点で、今度は、その中でも一番を決めようと言うことになり、真田幸村率いる二年の代表と上杉謙信率いる三年代表が決勝の場で戦うことになった。
「ぅぉぉぉぉやかたさまの敵ぃぃぃぃっ! この幸村が打ってみせるっ!!!」
「そのように肩に力が入っているようでは、まだまだですね」
 クスッと謙信に笑われると、余計に腹立たしくなる。幸村は満身の力で綱を持つと後ろの猿飛佐助に声をかけた。
「気を緩めるでないぞっ!」
「分かってますよ、旦那」
「皆の者っ! 行くぞぉぉぉっ!!」
「おおぅっ!!」
 幸村、佐助の後に続く総勢十人が勢いよく返答すると、今まで縄の真ん中を抑えていた旗が勢いよく上がった。
「始めっっ!!!」
「ぅおおおっ!!!!」
 上杉組、幸村組ともに自分の陣地に相手を引き入れようと満身の力で綱を引っ張る。
 最初は幸村組の勢いがよく謙信を陣地内に引っ張り込んだのだが、それもつかの間。
 持久戦となると引っ張る力が半端ない謙信組によって幸村組がジリジリと引っ張られる。
そうすると幸村組が底力をみせて引っ張り返して謙信を陣地に引きずり込むのだが、年下組に負けるのを善しとしない謙信組が、雄叫びをあげながら幸村を陣地内に引っ張り込む。
そんなやり取りが何度も続き、結果幸村が敵の陣地に入り込んだところで終了の笛が鳴らされた。
「ぬぅぅぅぅぅっ!!!」
「ふぅ…」
 言うに言えない悔しさで歯を食いしばる幸村に対し、どうにか体裁を保てた謙信が清々しく額の汗を拭いた。
「謙信組の勝利なりっ!」
 真ん中にいた行司が謙信の腕を取りながら回りに知らしめるように叫ぶ。幸村はうつむいて肩を震わせるしかなかった。


「負けた………。この思いどうしてくれようか…………」
 綱引き合戦も終わり、みんなが教室から去ってからも幸村は悔しくてプルプル震えていた。
「旦那。勝負に勝ち負けは付きもんだよ。今日は負けたけど、次は勝つかもしれないし、そんなに深く考えないほうがいいって」
 バンッ! と後ろから両肩に手を置いてきたのは、常に幸村を影から支える真田付忍隊・猿飛佐助だった。
「お主に何が分かるっ! このっ……この、どうしようもない気持ちっ! お館様に顔向け出来ぬわっ!」
「いや、その前にお館様は怒ってないから」
「なにっ?!」
「そう伝えておいてくれって、俺サマさっき言われてきたところ」
「ぬぬぬっ……。そっ…それは、つまりっ………某は、お払い箱…と言うことかっ?!」
「いや、いやいや。そういうことじゃなくてね」
「では、…某はっ………気にもされておらぬと言うことかっ!!」
 謙信に負けたことよりも、自分の主である武田信玄に気にかけてもらえないことに怒りと恐怖を感じた幸村。
自分の机をバンッ! と勢いよく叩いて立ち上がると教室を出て行こうとした。
「ちょ…ちょちょちょ……っと。旦那、どこ行くの?」
「決まっておるであろうっ! お館様にこの失態、土下座しに行かねばっ!」
「待ったっ! それ、ちょっと待った!」
 行く手を阻むように回り込んだ佐助が幸村を押し止どめる。
「何故止めるっ!」
「お館様は用事があるから、先にご帰宅されました」
「なにっ?! そのようなこと、未だ一度もなかったではないかっ!」


A佐助受   D幸村受