タイトル「コンスタントセッション」

 夏休みが始まった。
高校に入って初めての夏休み。
色々と計画は立てたものの相手とのスケジュールが合わなくて駄目になったもののほうが多い。
第一に言えるのが夏の旅行。
前半はバイトして後半にふたりして近場でもいいから旅行しようぜって言っていたのに、その後半に 塾の講座を入れられた。
相手がじゃなくて親がだから文句は言えないんだけど、それにしてもだ。

 夏休みに入った初日。
わざわざ学校の屋上で待ち合わせて俺たちは会っていた。
「お前の親って用意周到な」
「でもないと思う。子供の行動をよく理解しているんだと思う。
そこいら辺で女の子をハラませちゃかなわないな…とか思われたんだと思う」
「お前ってそういう奴なの?」
「俺はそうじゃないつもりなんだけど、親は危惧してるって言うかね。。。。」
「ふーん…」
 高校になったらハラませ放題だとでも思ってるんだろうか…。
としたら相当危惧されてるとしか言いようがないって言いましょうかね…。
そんなことを思いながらも昼飯を摘む。
「俺、午後からバイト入ってるんだけど、お前は?」
「俺は家に帰るよ」
「てか、帰り際にゲーセンとか寄ってくなよ。友達の俺が誘ったことになったらたまんないからなっ 」
「はいはい」
 そういうのもこの弁当を作ったのがこいつの母親だからだ。
俺と食べるからと作ってもらったものらしい。そんなこと言わなくていいのに…。

俺の名前は西一馬(にし かずま)。そしてこいつの名前は東一縷(ひがし いちる)。
方位と一字違いってので話題になってから知り合った。
隣のクラスのバカヤロウだ。
 背の高さとか体型とかよく似てるけど一縷は綺麗系で俺はガサツ系。
そんなことからいつも比べられて意識しだして知らない間にキスされて股間に手が伸ばされている間 柄になっていた。
 これって有りなんだろうか…。
てか別にそこまでなら高校生。やり合いみたいな感じで嫌でもない。
だけどそこから先はナンダカナー…になるので進展してないわけだ。
でもだったらこの調子だと俺がやられる立場になるみたいだから、それだけは阻止したいんだけど… ……
心のどこかで「まっ、いっか…」なんて考えもあったりして。
その部分の俺が強くなるのがちょっと怖かったりする。

「お前バイトはしないのか?」
「してもいいんだけど塾とか規制があるから出来ないよ」
「そっか…」
「でも旅行は行きたいな。お盆だけのバイトとか見つけてやるから、休み明けの連休とかどっか行か ないか?」
「あ、それいいね。それならお前も行けそうじゃん」
「お前と一緒ならいいって言うと思うけど、女がウジャウジャいるようなところは駄目だろうな」
「あー、手が早い一縷君の毒牙にかかるコがいるかもしれないから?」
 はははっと笑って言うと「そうそう」と笑って返されてしまった。
その毒牙にかかるのはもしかしたら俺かもしれないのにさ…。

「山行こうぜ、山」
「どこの?」
「それはまた決めるとして。バンガローのあるようなトコ。キッチンついてて作らなきゃ食えないよ うなトコ」
「お前が作るのか? 俺、作れないからな」
「べっ…勉強しとくよっ」
 強がりを言いながらも一縷と行けるのなら俺が飯くらい作ってもいいと思っている。
その後、俺が食べられたらどうしよう………なんて思いながらも、こんなひとときが好きだと俺は思 っている。
「俺、そろそろ行かなくちゃ」
 尻の汚れを払いながら立ち上がろうとした時、腕を取られてキスされた。
「んっ…んんっ……」
 首根っこを捕まれて引き寄せられるともっと深いキスになる。
俺はよろめいて抱きしめられて今まで座っていたコンクリートの上に仰向けになっていた。
「続き、したいな…」
「っ……ばっ…バカっ!!」
 こんな時にっ…!
別れ際はせめぎ合いだ。
いつもいつもギリギリのところで選択肢を迫られる。
そんなお前が大嫌いだよっ。
俺はもう一度、今度は自分から相手の首に手をかけると唇を寄せてキスをした。
しながら相手を押し退けて立ち上がり歩き出す。
「俺は今からバイトなのっ!」
「顔、赤いぞ。直してから行けよ」
「わかってるっ!」
 また一歩毒牙に近づいている。
そんな自覚がある夏休みの昼休みだった。
終わり
タイトル「コンスタントセッション」
20150708