タイトル「誰も信じてないけれど」

「服を脱いで這いつくばれ」
「……はぃ」
 理気(リキ)は只今バイト中である。高校生の出来るバイトなんてタカがしれていたが、これは違う。友達の友達の友達から紹介されたバイトは、公には出来ない仕事内容だった。
 相手は金を払ってくれれば選択はしなかった。
 裸になって自慰行為を見せたり、ムチで叩かれたり、縛られたり、撮られたり。そして最終的には尻に受け入れたり、と男を満足させることが多い仕事だった。たまにある異性相手の仕事もほとんどが自分の親よりも年上の女が多かったので色々と難しかった。だからどうせなら異性よりも同性のほうが手っ取り早かったし、楽だった。
 男が好きだと言われれば『そうかも』と答えていたかもしれない。正確にはどうだか分からなかったが、そんなことは理気にはどうでもいいことでもあったのだった。

 今も制服のまま来いと言われて従った。
 今時珍しい黒の学ランに黒髪を保ち、顔立ちも幼い理気は人気者だった。
 何人からも『囲ってやる』と言われたが、専属になるのはどうなんだろう……と思ったので返事をしていない。そして毎日違う人を相手に体を開く。制服は駄目になったら駄目にした人に買ってもらえていたし、体の傷は数日経てば癒えたから何とも思わなかった。
 ビシッ! と裸の尻に馬用のムチを打たれて「うっ!」と小さく呻く。尻の割れ目を目がけてもう一度ムチを打たれるとブルッと身を震わせた。
「いい子だ、リー。尻の穴がもっと見えるように広げてみせて」
「は……はぃ」
 次には絶対に尻の穴目がけてムチを奮われると分かっているのに返事をする。理気は四つん這いになりながら、自分の片手で自らの尻肉を開いて「お願いします」と口にしていたのだった。
「分かってるじゃないか。もっと言うことはないのか?」
「ぁっ……あのっ……。僕はっ……ご主人様の……そのムチでっ………僕の……う〇この出てくるところを……戒めて欲しいてすっ……! 汚いモノが出てくるところをご主人様のムチで清めて欲しいですっ!」
 ブルブルと身を震わせながらそんなことを口にする。興奮した『今日のご主人様』が嬉しそうに尻肉や割れ目をムチ打って、それからそこに射精した。理気にとってはそれからが大変で、『今日のご主人様』をもう一度奮い立たせるためにむしゃぶりつき、おねだりをし、自ら脚を開いて誘ってみた。それでも駄目な場合は、『また次回』となるのだが、大抵の『ご主人様』は再び勃起して挿入してきた。
「ぅっ…ぅっ…ぅぅっ………」
「リーの尻はキツキツで好きだよ。あんまり解さないで入れるのが最高だよね」
「ぁっ…ぁっ…ぁぁっ…………んっ…ん………んんっ……!」
「ああ、そうそう。前はどうかな……」
 力任せに握られて「ギャッ……!」と悲鳴が上がってしまう。相手にしてみれば、それがまたいいらしくて何度も握り潰されるほどに力を入れられ、袋も嫌と言うほど引っ張られて気絶寸前まで追い詰められる。
「あっ…あっ…ぁっ……………ああっ………!!」
「もっと鳴いてごらん。チ〇コいりませんっ! とか、袋いりませんっ! とか言ってもいいんだよ?」
「いっ……いやっ……! ああ……んっ!」
「君は僕の女なんだろ?」
「そ……んなことないっ!! っ……ぅ……ぅぅっ……! ぅ……!」
 乳首も摘ままれて潰されて引っ張られながら尻の穴を犯され、そんなことを言われる。中に生で射精されてからストッキングで体を縛られて四肢の自由を奪われて芋虫のように這って移動するのを強要される。
「おいで。散歩しようか」
 芋虫スタイルで首輪を付けられて家の中を散歩させられる。もっともこれはまだマシなほうで、真夜中と言う場合なんかは縛られた体にコートだけを着せられて首輪を付けたまま外に散歩に出掛けると言うパターンもありだから怖かった。
『ご主人様』にとって理気は『体のいい犬』でしかないのだから文句は言えないのだが、それでも警察に掴まると厄介なので外は避けたかったから良かった。
 しかし芋虫のままの散歩はとても辛い。第一チ〇コが床に擦れて痛いから嫌だ。その後、ソコを踏み付けられるのも好きじゃなかったが、勝手に反応するから具合は良かったと言ってもいい。
「うっ…うっ…ううっ……!」
「お前にチ〇コは必要ないんだよっ! 男を満足させるには尻だ! 尻の穴だけビクビクッと敏感になればチ〇コからの汁は、まあどうでもいい! 謝れっ! 俺を満足するよりも、お前自身が満足してしまったことに対して謝れ!」
「うっ……ぅぅ…………ぅ………。ごめんなさぃっ……。チ〇コから汁流してごめんなさぃっ……。僕は……悪い子ですっ……。ご主人様に体を触っていただけて……嬉しくてチ〇コから汁を流してしまいましたっ……。チ〇コから汁流してごめんなさぃっ……。僕のチ〇コは悪い子ですっ……」
「リー……」
「チ〇コっ……もっと踏んでくださいっ……。僕、悪い子だからっ……。汁……垂れ流してごめんなさぃっ……。ご主人様の言うこと聞けなくてごめんなさぃっ……」
 いったん動きを止めた相手だが、それで許してくれるはずもなく吊るされて何度も射精を強要される。人気者の理気は毎日こんな具合だったので、陰毛は毟られて生えてこなくなってしまったし、相手がいれば勃起をするのも普通になっていた。
 時には一日全裸で『ご主人様』にご奉仕する日もあった。それは口だったり下の口だったりと相手を満足させることが出来ること全てでのご奉仕なのだった。
 その他『写真集を出さないか?』と言うお誘いもあったりしたのだが、それはそれなりの写真集なのだろうと即座に断ったりしたのも記憶に新しい。



「理気! お前、いい加減にしないと出席日数足りなくなるぞ!」
「ごめん」
「ホントに分かってる? 後二日くらいで留年確実だよ?」
「うん……」
「だったら!」
 久しぶりに学校に来たら、隣の席で学級委員長の清瀬藤四郎(きよせ とうしろう)がまくし立ててくる。彼は入学してから何かにつけてちょっかいを出してくる世話好きの好青年だった。理気の見た目が可愛らしいから言い寄ってきているのだろうと思った時期もあったが、そうでなくても気になった相手にはとことんらしいと言うのが最近分かった。理気と同じように髪の毛を染めることもなく品行方正の切れ長の目を持つ男だ。しかしそんなことを言われても一度入れた仕事は仕事だし、ちゃんと頑張らなければならないと思っていたから断れなかった。
「お前さ、頑張るところ間違えてるとは思わないのか?」
「…………何が?」
「色々聞いてるぞ?」
「……」
「まず謝れ。僕に謝れ」
「何で?」
「お前のことを気にしてる僕に謝れ」
「……ごめん」
「それから表明しろ」
「?」
「もう客は取りません。と」
「な……んで、それ…………」
「お前みたいにエロエロなフェロモン出してるヤツいないからな。尻の穴いつもユルユルで口も半開き」
「…………」
「僕のものになれ。好きなだけしゃぶらせてやるし、入れてやるっ! ただし、その後の入金はないっ!」
「ぁ……あああ…………」
 なんだそれ。って感じで、真正面の清瀬をマジマジと見つめてしまう。だが本人は至って真剣らしく、真面目な表情で返事を待っている。
「えっと…………」
 バイトと言うのは内容云々よりも結果が大切だったりするわけで、清瀬が言っていることはその結果がないと言うか成功報酬がないと言うか……。どう答えたらいいのかが分からなかったが、とりあえず言わなくてはいけないことは言わなければいけないだろうと深呼吸する。
「あのさ……」
「何」
「俺、慈善事業で男のモノ尻に入れてないし、しゃぶってもいない。別になければないで全然平気なの。OK?」
「ん? んん?」
「俺さ、働いてるわけよ。分かる?」
「う…うーん…………」
「お金、必要だから働いてるの。お前のモノ、興味はあるけどただそれだけ」
「……」
「……お前こそさ、俺に興味があるんなら金出せよ。しゃぶってやるし、入れさせてやるよ。反対がいいなら、それなりに努力してやるし」
「うーん…………」
 難しい顔をして考え込む相手に最初から返事なんて期待していなかった。
「じゃ、そういうことで」と、さっさとその場を後にしようとした時、「じゃなくてっ!」と腕を取られて振り向かされた。
「!」
「だったら! 昼間は仕事入れるなよっ!」
「ぇ……」
「留年するつもり?!」
「……」
「僕は嫌だぞっ?!」
 泣きそうな顔で迫られて喉の奥が『ぐっ…』と低く鳴った。
「もっと努力しろよっ!」
「……」
 何の努力だよ。と聞きたいのを押さえて『ゴクンッ』と唾を飲み込んだ。あまりに近くに奴の顔があったからってのもあったし、その真剣さにもビックリしたからだ。
「理気っ!」
「…………分かった」
 分かったけど急には実行出来ない。必死になってくれる清瀬には悪いと思ったが、彼が教えてくれた欠席日数はどうにかしなくてはならない。理気は頭の中でスケジュールを組み立て直していた。
「お前、馬鹿だろ」
「何がだよっ」
「来週試験だぞっ?!」
「そうだっけ」
「そうだよっ。先生がわざわざ『ここ出るよ』って教えてくれてるのに寝てるし、こっちは冷や冷やだよっ!」
「ごめん……」
「勉強しよ? 今からならまだ間に合うから」
「うん……」
「だったら今日からだから」
「ぇ……今日はスケジュールが…………」
「駄目なのかっ?!」
「……いや。どうにかするよ」
「善しっ!」
 気遣ってくれる友達がいる内が花。理気は今夜、から試験勉強がある日にちのスケジュールをどうにかしなければならないなと考えながらも口元に笑みを作っていた。
「ったく……。適わないな、清瀬には」
 愛河理気(あいかわ りき)、十七歳。ちょっとだけ人が好きになりかけている瞬間だった。
終わり
20180524・0531
「誰も信じてないけれど」