タイトル「無知な小人(こども)と腐った大人」

 立場を無視した言動をしてくる奴がいる。
 僕の心の中に勝手にズシズシと入ってくる失礼な奴。
 名前は琴鳴吉瀬(ことなり きつせ)。僕の行っている学校の先生だ。
 でも奴は学校じゃあ異端児的な異質な存在だったりする。


「好きなんだけど、抱かせてくれないかい?」
「ぇ……………」
 こいつ何を言ってるんだろう…。
 第一に思ったのがそれだった。
 それしかないだろう、普通。
 だけど相手は真剣そのもので、
 学生同士のそれのように屋上に呼び出されて言われた言葉にうろたえるしかなかった。
でも僕はそれを悟られるのが嫌で、いたって冷静なふりを装った。
 極めて冷静なふりだ。

「神田斗夢(かんだ とむ)」
 向き合って手を取られた。
 とたんに冷静なふりなんてすっ飛んでしまう。
 僕は奴の手を払い退けた。
「先生はおかしいっ!」
「……分かってる。だから拒否してくれてもいい。だけど言わなきゃ前に進めないんだ」
「ぇ………」
「すまない。今言ったことは忘れてくれていいから。じゃ」
「ぁ………」
 いとも簡単に、あっけなく言うだけ言った琴鳴は僕に背を向けると階段に向かって歩き始めた。
「ちょ…ちょっと!」
「……スルーしてくれ」
「あんたズルイよっ!」
「………ああ」
 僕の言葉に足を止めた琴鳴は振り向いて短くそう言った。
 その時の顔が何とも言えなくて……。
 僕はちょっとだけキュンとしてしまったのだった。
終わり
20131008
タイトル「無知な小人(こども)と腐った大人」