タイトル「拾得物・オヤジ」

家に帰ると玄関先で電気のスイッチを付ける。
小さなたたきの玄関で靴を脱ぐとすぐにキッチンと言うアパートは築30年は経っているだろうと言う代物だ。
「ただいま」
言いながら奥の部屋に歩く。
そこには万年布団が敷いてあり、こんもりと人型が作られていた。
「ただいま」
もう一度言いながら布団の横にしゃがみ込むとペロリと掛け布団を捲ってみる。
「ぅっ………ふふ…ぅ……」
「いい子にしてた?」
「ぅぅ………」
そこには猿轡をして裸で縛られているオヤジがいたのだった。
彼の名前は又吉(またよし)。
名前を聞いても教えてくれないので青士(あおし)が勝手につけた名前だ。
青士はオヤジを縛っていた紐を解くと「いいよ」と一声かけた。
それを聞いたオヤジはダッシュでトイレへと走っていったのだった。


ここの主人は北村青士(きたむら あおし)、24歳の派遣社員だ。
工場でコツコツ働きながらシケたボロアパートで暮らしていた。
見かけはそんなに悪くない。
いい服を着て、それなりの場所に出向けばそれなりに見られる。
むしろそっちのほうが見かけに合っているようにも見えるのに、一向にその気配はない。
それは性的な趣向にも現れていた。
可愛らしくてピンクのほっぺを演出している女の子が隣にいれば普通の今どきのカップルだろう。
だけど青士の好みはオヤジのケツ掘りなのだ。
だから今みたいに街でフラフラしてるオヤジと交渉して数日単位で遊ばせてもらうのだ。
この又吉と言うオヤジは自称48歳。まだ浮浪者になりきれていないオヤジだった。
だから一見浮浪者には見えない。だけどちょっと困ってるよ、みたいな人が交渉しがいがあった。
最初は抵抗する。だけど条件を聞くとちょっとそそられる。で、ピックアップしてくる。
だけど相手が嫌がることはけしてしない。徐々に徐々にその気にさせていくのが青士の好みなのだ。


「どう。膀胱大丈夫?」
「ぅ…うんまぁ……」
スッキリした表情でにこやかに笑ったオヤジは裸のまま布団の横に正座して三指をついた。
「おかえりなさい」
「うん。まず飯食おうか」
「はい」
「何か着て」
「えっ……えっと…」
「ああ。………っと、そうだな………。とりあえずこのスエットでも着て」
「はい。ありがとうございます」
 又吉の洋服はまとめて洗いに出そうと思ったのだが、ちょっと臭いがきつかったので処分してしまったのを思い出した 。
帰る時には新しいものを買う算段はしてあるのでいいのだが、食事をしたりするのに全裸のオヤジを前に飯は食いたくな かった。
体格的にはちょっと違うが、どうにかスエットなら大丈夫そうなので相手に手渡すと又吉は全裸にちょっとダボッとした スエットを身につけたのだった。

紐で縛る行為も青士からの提案ではなく、あくまでも又吉からの提案だった。
「世話になっているのに、あんたがいない間に何かがなくなったりしたら俺のせいになる。それは嫌だ」と言うので
「それじゃあどうする?」と聞くと
「縛ってもいい。どうせ全裸なんだから動けやしないけど」と言われた。
「じゃ、別にいいんじゃない?」と再び聞いてみたのだが、相手は譲らず結局ノリで猿轡までしてしまった。
案外又吉オヤジはこういうの好きらしい。

青士は冷蔵庫から野菜と焼きそばを取り出すとキッチンに立った。
その間又吉オヤジは「何をしましょう…」と困り顔で聞いてきたので「それじゃあ」と風呂の準備をしてもらった。
古いアパートのいいところはユニットバスじゃないところだ。
ちゃんとトイレと風呂が別々になっている。
確かに小さいけどクソと風呂は一緒じゃないほうがいいに決まってるだろ?
又吉オヤジはすごく充実した顔でキッチンに帰ってきた。
それから飯が出来上がるまで、おとなしくキッチンの食卓にチョコンと腰掛けていたのだった。
自分では何も出来ないらしい。
そこがまた可愛いと思った。
「いつもはどうしてるんですか?」
「えっ………?」
「食事」
「…コンビニとか」
「ああ。………今日、昼なかったでしょ。二食で大丈夫なんですか?」
「食べられるだけマシだよ。一日クッキー1枚の時もある」
「………それは健康的に良くないですね」
「………」
「金銭的な問題ですか?」
「だいたいそうだね。分かるだろ? 君と会った時、俺はもう数十円しか所持金がなかったんだから」
「うん、まぁ。」
 プライドって言うのかな。
縛っていってくれと言ってきたのは彼のプライドがまだ残っているからだと青士は思った。

それからふたりで食事をして風呂に入った。
ひとり入るのが精一杯の広さなので、「お先にどうぞ」と言ったのだが、又吉オヤジは「家主が先でしょ」と譲らなかっ た。
仕方ないので青士が先に入ってから寝室で待つことにした。
「全裸でいいですからね」
「ぁ、ああ…分かった……」
出てきてもわざわざ服なんて着なくていいよと言う意味でそう言ってから風呂を勧める。
又吉オヤジは一日の大半を全裸で過ごしたくせに恥ずかしそうに頷くと風呂へと向かったのだった。

カタンッ……カタンッ…と風呂場で石鹸を置く小さな音がする。
そして石鹸のいい匂いが漂ってきて、相手が今何をしているかを想像してしまうくらいだった。


ここでどうして青士がオヤジ好みになったかを書いておこう。
そもそも青士は幼いころからちょっと可愛らしい子供だった。
時には女の子と間違われるくらい。
そしてよく公園などで知らないおぢさんから色んなことを教わったりしていたのだ。
下半身を触られたり撫でられたり摘まれたり吸われたり。
何人ものおぢさんは青士に優しかった。と言うより、痛いことはけしてしなかったのだ。
だから初体験こそ女子だったが、興味は知らない間に年上の同性に向けられていった。
おぢさんたちが優しかったように青士もおぢさんに無理強いはしなかった。
ちゃんと選択肢を与えて相手に答えを求める。
今回もちゃんとそうして、金銭的にだがお礼だって用意していた。


「ぅっ………うっ…ぅぅっ……んっ………」
「辛い?」
「ぅ……う…ん………。な………んかっ…………変っ……な…き……もちっ………………」
「最初はみんなそう言うんだよ。ごめんね、無理させて。慣れたら動くから」
「ぅ……ぅん………っ…」
青士は後ろから又吉に挿入して覆いかぶさっていた。
オヤジのソコはバージンだったから丹念に時間をかけて広げてから挿入した。
挿入しながら又吉のモノを弄っていると縮んでいたモノが徐々に硬さを増していく。
割れた先を親指でゴシゴシと刺激してやっていると先走りの汁まで垂らしてきたので、しごきながら動きだした。
「うっ……ぅ…うっ………」
「ふっ………ぅ…ぅ……。あ…んたの中……熱くていいよっ………。あ…んたはどう……?」
「お……んなになった…みたいだっ………ぁ………んっ………!」
「気持ちいいって……こと?」
「う…んっ……。太くて…熱いの……っ………す…ごく……いいっ………!」
「そう」
それは良かった。と気を良くした青士はしごいていたモノから手を離すと腰をしっかりと掴んで尻への出し入れを激しく したのだった。
「あっ! ぁぁっ…! ぁ……んっ! んんっ! んっ………! あんっ……!」
「いい声だねっ。自分でしごいてもいいよっ?!」
言いながらガンガン腰を打ち付ける。
又吉は反射的にシーツを掴んで上へ上へと逃れようとする。
それを引き戻して裏返すと対面する形にして腕を首に回させた。
「しっかりしがみついて」
「ぅ……ぅん…。あっ! ああっ………! あっ!」
抱きつかせて下から突いてやるとオヤジは大きく身を反らながらブルブルッと震わせた。
「出るっ?!」
「ふっ…ぅ…うんっ…! で……ちゃぅ…ぅ………!!」
抱きつきながら触ってもいないモノから勢い良く射精する。
ドクドクッとふたりの腹に胸にと精液が放たれた。
「くぅ…っ……ぅ………」
「後でしっかり拭いて上げるからね。もぅ…少し……付き合って」
「ぅ……ぅ…んっ」
ガクンガクンと頷くのを確認しながら突き上げを激しくする。
布団の上に寝かせて脚を持ち上げると挿入角度を変えたりして楽しんでから最後の最後でモノを引き抜き相手にぶっかけ た。
ドクドクドクッ!と彼が放った腹をめがけて放出する。
彼は惚けたように口をだらしなく緩ませていたのだった。
「又吉。………ワンッって言って」
「ふっ………ぅ…ぅ……ワンッ」
「いい子だ」



最初が良かったのだろうか。
又吉オヤジは正式に青士と暮らすことになった。
最初は家畜とかペットでいいと言うオヤジを説き伏せ、最終的には内縁の妻と言う立場まで持っていった。
「妻………」
「妻だろ?」
「じゃ…じゃあ俺はスカートを履いて……」
「いや、違うから。あくまでも立場が、ってこと。俺が稼ぎに行くからあんたは食事とか洗濯とかしてよ。もちろん仕事 が見つかったら働けばいいし」
「ぅ、うん………」
「あ、でもあんたは俺の妻だから、他のヤツと付き合ったら駄目だよ? 女でも駄目だからね? 分かった?」
「……分かった」
その言葉に青士はにこやかに微笑んだ。
だけど目の前の又吉オヤジは「いいのかな………。いいのか? こんな俺で………」を繰り返すばかりで、まだ事実だと 認められない様子だった。
「これ、事実だからね」
「ぁ、うん………。でも………」
「じゃあさ。またでいいからホントの名前教えてよ。急がなくていいから」
「ぁ…ああ……ごめん。………………俺の…ほんとの名前は………」と、又吉は青士に本当の名前を教えてくれたのだっ た。
END
20140515

イメージ/松○桃李×蟹江○三
タイトル「拾得物・オヤジ」