タイトル「聖執事-壱」試読

 もうすぐ冬が来る。俺・万城目砂王(まんじょうめ さわん)の心はザワついていた。
「どうされました?」
「……別に」
「では、もう時間がございません。お急ぎください」
「分かってる」
 朝。学校に行くのに朝食を取っている中、後ろから催促される。
催促してきたのは、俺専用の執事・貴崎利翌(きさき りよく)だ。顔立ちが良くて優し気で、よくモテる男。執事だからか髪も染めてないのにツヤツヤサラサラで、身のこなしも綺麗な大人。小さい頃からいつも一緒で、よく面倒見てもらってる年上の執事だ。年は……いくつだったかな。
「お前、いくつだっけ」
「今二十五ですが、何か」
「いや、いい」
「はい」
 そうか、二十五か。ってことは八つ違い。俺はまだ高校二年だし、年で言えば十七だ。なのにこいつときたら……。
 数時間前には迫ってきたと言うのに、それを全然顔に出さない図太さ。感服するしかないよ。






「主(ぬし)、主。起きてください」
「ぅ……んっ……。なんだよ……」
「お話があります。起きてください」
「こんな夜中に……。うっとおしいなぁ……」
 ノロノロとベッドから身を起こすと貴崎と向かい合う。
「時が来ました」
「何の時だよ」
「大人の扉が開く音がしました」
「……俺には聞こえなかったけど?」
 何言ってんだ、こいつは……。と思いながらも、ちょっと面白そうだから相手に付き合う。
俺は寝ていたからもちろんパジャマだったんだけど、相手は「まだ」なのか「もう」なのか制服の黒服で普段着ではなかった。
「主はこれから次期当主として体のお勉強をしなければなりません」
「体の勉強?」
「はい」
「なんだそれ」
「それを今から実行します」
「いや、実行じゃなくて、まず話せよ」
「駄目です」
「駄目じゃなくて」
「習わしですから」
 言われても即座に反応出来なくて、こちらとしては戸惑うばかりだ。
「私もこんなのは聞いてなかったのですが、習わしなので受け入れます」
「だから何を?」
「交わりです」
「……それは俺とお前が、ってこと?」
「はい」
「そんなに即座に出来そうもないと思うけど」
「私もそう思いました。けどこの一線を乗り越えないと、どちらか分かりませんので」
「どちらって、どちら?」
「つまり受け入れOKなのか否か。同性へのアピールは大丈夫なのか否か、です」
「……それって重要?」
「はい。習わしなので」
「お前さ、それ全部習わしでOKだと思ってる? お前は俺を抱けるの? 受け入れられるの?」
「分かりません、やってみないと」
「それって、「でした」じゃ済まないのかな」
「報告義務がありますので」
「誰に?」
「秘密です」
「フェアじゃないな。そんなの受け入れられないっ」
「……では、これは私にとって一大事だと申したら了承していただけますか?」
「やだよ」
「……明日から執事が私でなくなってもいいと?」
「それもヤだな」
「ではお願いです」
「ヤだよ」
「お願いしますっ」
「ヤだったら」




 結局押し切られた。


 貴崎は無言で上着を脱ぐと布団の中に入り込んできて、パジャマの中に手を入れてきた。そして直にモノを触られてゴシゴシしごかれた。
そんなに簡単に変化なんてしてやるもんか、と思っていても、クニクニされたりくびれを探られたりすると、ちょっとづつ微妙な変化が起きる。なにより貴崎の荒い息遣いが耳元で聞こえてしまうとテキメンで、変化するのは早かった。
「ばっ……ばかっ」
「すみませんっ。でも……感じてますよね?」
「そりゃ……ぁ……そこはっ……駄目だってばっ……ぁ」
「はい。そこがいいんですね?」
「おっ……まえ、聞いてる!? 俺はっ……ぁ……駄目って」
 言い合いしている間も貴崎の手はしっかり動いていて、先走りの汁を流している俺のモノを音が出るほど摩擦してきた。
「あっ……ぁぁっ……あっ!」
 グチュグチュになった貴崎の手の中で、プラスパンツの中で、俺は相手によって射精させられた。それは気持ちいいとかよりも恥ずかしさのほうが強かったのかもしれない。
うつむいていると、そのままの勢いで下半身を脱がされて後ろの穴にスルリと指を入れられる。
 あっと言う間に今度は指でソコを解されて、気が付いたら指が二本に増えていた。
試読終わり。本編に続く。