タイトル「たとえば、これが俺の××」part3

 たとえば。木枯らしが吹く帰り道。隣にいる三島鉄に抱き着きたいとか思ったらどうする?
「……寒いな」
 俺、津村砂鳴は相手を伺いながら言葉を出した。
「ああ」
「こんな時はさ、暖かいスープとか飲みたいよな」
「ぇ、俺は肉まんかな。ホクホクしたやつ」
「ああ。それいいな。さっそさく今からコンビニ行っちゃう?」
「ああ」
 ホントはさ、肉まんは肉まんでも抱き締めてほお張りたいのが、お前なんて言ったらきっとこいつ怒るだろうな……。
 そんなことを考えていると、それを察したように三島鉄が俺を覗き込んできた。
「お前、顔赤いぞ」
「そ、そうか?」
「ああ。ここんとこ寒いからな。風邪でも引いたんじゃないのか?」
「そ…んなことないって」
 うーん。心配してくれるんだ、三島鉄。そんなところが嬉しいよ。てか、可愛いよ。
 俺の不埒な心を疑う心を疑うことなく受け入れてくれる三島鉄。思わず……。
「ギュッとしてい?」
「だーめーだってってるだろうがっ! す…ぐにお前は、そんなことを言うっ!」
「だって俺、三島鉄のこと好きなんだもんっ」
「あっ、そっ」
「俺も俺も。とか言わないのかよ」
「言わなーい」
「何で!」
「お前調子に乗るから」
「………ちぇっ」
「言っとくけどさ」
「ん?」
「俺のこと、ラーメンで釣れる男だと思うなよ?」
「うん? この前のこと言ってるのか?」
「ああ」
 この前とは、宿題を忘れて放課後居残りしていた時に、たまたま日直だった三島鉄が見かねて自主勉の手伝いをしてくれたことだ。俺はその時、奴
にラーメンをおごるからやってくれとダダをこねたのだ。
「安心しろ。俺の小遣いはもう当の昔に底をついている。これ以上誰にもおごることは出来ない」
 胸を張って言うと怪訝な顔をされてしまった。
「ん? どうしたんだよっ」
「小遣いが底をついてる奴と今からコンビニ行くのか? じゃ、代金は誰持ちなんだよ」
「ぁ……いや、俺だって肉まん代くらいは持ってるから安心…しろっ!」
 慌ててポケットの中を探るが、なかなか銀色のコインが見つからない。見つかるのは銀色は銀色でも穴の開いてるコインがひとつだ。後は銀色は銀
色でも一番軽いコインしか見つからなかった。
「ぁ……ごめん。俺、肉まん買えそうにない」
「だな。50円じゃ肉まん半分だ」
「うん…………」
「じゃあさ、肉まん一個買って、それを半分っこしないか?」
「え? お前はそれでいいのか?」
「いいって言うか、それが今出来る一番の贅沢なんじゃないのか?」
 ニッコリと笑われて嬉しさが倍増する。
「三島鉄ぅぅっ! やっぱ俺、お前のこと好きだわぁ!」
 許可も取ってないのにいきなり抱き締めてほお擦りを繰り返す。
「ぅぅぅぅ………! だからっ! 過激なスキンシップはやめれって言ってるだろうがっ!」
「あうあうっ…! 三島鉄、冷たい……」
「いや。俺は断じて普通だっ! 極めて普通の男子高校生だっ! 肉まん食うか食わないか、はっきりさせろっ!」
「食う! 食いますっ! 半分っこしよ? なっ?!」
「………」
 こうして三島鉄と俺は今日も仲良しだ。
 何となく身に危険を感じてる三島鉄。
 小さくもないのに小動物みたいな三島鉄。
 可愛いから好きだ。
 でも色んなとこ触ってみたいし、色んなこと試してみたいっ。
 俺の妄想は果てしなく続く。
終わり part3 
20101031