タイトル「出会いはいつも偶然ってわけじゃない」試読
「ふっ……ふ……ぅ………んっ………」
「んっ…ん……ん………」
社内でも奥まっている場所にある備品室でホワイトカラーと呼ばれる男たちが絡まっていた。片方はほとんど全裸なのに対し、もう片方はほとんど衣類の乱れもない。
攻められている男は細身の年配で、膝までズボンを脱がされて上半身はワイシャツの前をしっかりと開かれていた。でもネクタイだけはしっかりと締めているものだから少しおかしな感じもするが、逆にエロチックだった。後ろから尻の割れ目に股間を押し付けられているその姿は汗と我慢する吐息と身悶える姿でとても卑猥に見えた。
攻められている男の名は栗田我門(くりたがもん)、四十二歳。年齢の割りには白いものが交じった頭髪と四角い黒縁眼鏡。乱れて喘いでいなければ、人当たりの良さそうな優しげな面構えが安心感を誘うバツイチ男だ。そして後ろから攻めているのは部下であり新人でもある足立勘一(あだち かんいち)、二十五歳だった。
彼を採用したのはつい一カ月前の話だ。
有能な社員が辞めてしまい絶対的に人員が足りなくなってしまった。だから中途採用したのが彼、足立だった。ガタイがしっかりとしていて爽やかな笑顔がとても印象に残る好青年だった。
「も……ちょっとで出ますっ………!」
「うっ…ぅん…………っ…ん………ん………ん………!」
「あっ…! ああっ……!!」
「ふ…ぅぅ……んっ……!!」
尻にドクドクッと脈打つモノを感じる。
この時間、こんなことをこんなところでしているのには多大な背徳感を伴う。それでもしているのは彼に気に入られたいからだと思う。そんなところが自分でも情けないと思うのだが、引き締まったその体に抱かれるのは、それだけでも凄く感じた。それも相手からの誘いで体を開くのは身が震える。抱き締められるとそれだけで下半身が熱くなってしまうのをどうしようも出来ない。だからこんな場所でも嫌と言わずに抱かれてしまっていたのだった。
事が終わると『こんなこと馬鹿みたいだ』と思う想いがムクムクと沸いてくるのを抑えられない。それでも抱かれるのは求められてるからだし、自分も彼を味わいたいからだと思う。
「時間っ、かかり過ぎてますよね。早くしないとっ」
「…………うん……」
汚れてしまった体をどうしようかと思っていると、部屋の片隅にある水道で自分のノースリーブの下着を脱いで湿らせた足立が汚れてしまった我門の体を拭きだした。
「すんませんっ……。俺が迫ったばかりに我門さんに負担かけてしまって……」
「…………いつものことだろ?」
「だけどっ」
「いいから。そんなこと言うな」
「…………はぃ……」
ションボリしながらもゴシゴシと我門の汚れた体を必死になって綺麗にしてくるのは罪悪感からなのか……。たとえそうだとしてもこちらの体は満ち足りている。
昼間、急に迫られた我門は支度もしてないのに無理だと言ったのに認められずに素股で彼に応じた。素股とは股をキツく綴じて相手を迎え入れる方法だ。本当なら尻に迎え入れたいところをソコで賄うのは別の意味で感じる。肝心なところに入れてもらえないもどかしさと、場所が場所なだけに早くしないと…と言うせかされた思いがどうしようもなくさせる。
「もう…いいよ」
「でもっ」
「直接入れたわけじゃないから……大丈夫。負担になってないから……」
「でも……」
それでも申し訳なそうな顔をする足立の肩を借りて身を起こすと身なりを整えてるのに手助けしてもらう。ほんの三十分の逢瀬は刺激的なものだった。