タイトル「サマタゲになるもの」
「んっ……んんっ……ん…………」
「山口うるさいっ……」
「ごめん、ツッキー……っ……ぅぅ……ぅ……」
「黙れ」
「ごめんっ……」
言われた山口は必死になって耐えるのだが、されていることに対していくら頑張ってみても限界は近づいてきていて、それが今だったりした。
山口忠は今、誰もいなくなった部室で月島蛍に下半身を嬲られていた。
部活の後、月島がまだまだ練習に納得いってない顔をしている時。山口はチラチラと彼を伺ってドキドキしていた。
○
告白したのは昨日。
やっぱり部活の帰り道だった。
坂道を下って駅までの道を歩く中、街灯と街灯の間になる明かりが十分に届いていない暗闇で、思い切って声をかけた。
『あのっ……あのさ、ツッキー……!』
『……何?』
『……』
『早く言えよ』
『おっ……俺っ! ……ツッキーのこと好きっ……だからっ!』
『……知ってる』
『そうじゃなくてっ!』
『何お前生意気言ってんの? 俺が知ってるって言ったんだから知ってるんだよっ』
『ぅ、うんでも……』
それから先がなかなか言えないでいると大きくため息をつかれて
『知ってる。こういう意味でだろっ?!』
グイッと手を取られて引き寄せられると首根っこを掴まれて唇が重なった。
『んっ……! んんっ……!』
なっ……! 何っ?!
手にしていたカバンを道に落として目をバッチリと開けたまま唇を重ねる。
ツ……ツッキー……?!
まるで体が硬直してしまったみたいに動かない。だけど彼がいつもより身近にいたし、重ねられた唇が熱を持っているようだった。
ツッキーの唇が……。
思ったよりも柔らかい。
それに熱いっ……。
ギュギュギュッと押し付けられて抱きしめられると、このまま舌が入ってきてしまうんじゃないかと思う。
そしたら俺はっ…………。
どうしよう……と思ったその時に、パッと体を離されて月島の体が離れた。
『ぁ…………』
『…………』
今俺……キス…された…………?
されたことが現実なのかどうかが分からないほど胸がドキドキして動揺していた。
『ツ……』
ツッキー。と呼ぼうとして『黙れっ』と遮られる。
『ぇ……』
『いいから黙れっ』
『ぅ…うん……』
『お前のことなんて、お前に言われなくたってちゃんと把握してるんだっ。キッス・ハグッ・ズブズブ。そんな感情っ……僕にだってあるっ!』
『ぇ……』
暗い中よく分からなかったが、そっぽを向いていた月島は顔を赤らめてたと思う。つまり恥ずかしいのだ。
それを見た山口はちょっとだけ気持ちが軽くなると唇を緩ませていた。
『嬉しいよ、ツッキー。俺、ツッキーのためなら何だってするよ』
『…………』
『ツッキー』
『……僕は、言葉にするのは得意じゃない。だけど行動で示すのは得意だ』
『……分かってるよ、ツッキー』
山口はそっぽを向いたままの月島に嬉しそうに抱きついた。ギュッとして顔を寄せると彼の匂いを嗅ぐ。
『うっとおしいよ、山口っ』
『うん。ごめんっ、ツッキー』
『やめろっ。僕がするのはいいけど、お前から何かしてくるのは禁止っ!』
グイッと押しのけられて彼の真っ赤な顔が見て取れる。
『……分かった。俺、ツッキーにならとことん付き合えるって断言出来るから。なんでも言って。満足するまで嬲ってもいいよ』
○
そう言ったのに、このザマは何なんだろう……。
山口は下半身を彼の前に晒し開示したこともない秘所を彼の前に晒していた。
ズブズブと彼の指先が中に入ってくる。それを実感しながらも嫌がってはいけないと自らを諭す。
ローションを塗られた彼の指先は抵抗なく何本も山口の中に入り気持ち良さを与えてくれる。だけどこれでは駄目だと山口は分かっていた。
これでは自分が気持いいだけで彼を気持良くさせていると言えないからだ。
誰もいなくなった部室で手早く彼を満足させるには、これしかないと思ったのだが、どうやら勉強不足だったらしい。
月山は我武者羅に山口の秘所に指を出し入れしていたが、自分のモノにはいっさい触れなかったからだ。
「ツッキーっ……」
「何?」
「これ……間違ってるっ…………」
「何故?」
「だってこれ……。俺だけが満足してるっぽいしっ…………」
だから俺もツッキーのモノを……と言う気持ちで、どうにか声を出したのだが、
相手は「これでいいんだ」というような顔つきで憮然としたまま山口への攻めを忘れなかった。
「お前さっ」
「ぁ……っ…………ぅぅ…………」
「自分が生意気だって分からないのか?」
「ぅぅぅっ…………っ……」
「僕がこれでいいって言うんだから、これでいいんだよっ。お前は僕にいいようにされて善がれよ。僕はそれが見たいんだからっ」
「ぁ……うんっ…………。ぅ……ぅぅっ……ぅ…………」
ズブズブと緩んだ秘所に指を根本まで入れられて、それから急激に出し入れされるとどうしようもなくなる。
下半身を露わにしたまま、その痴態を彼に晒す。それが彼の望んでいることならそれでもいいと思った。
「あっ……あ……ああっ……ぁ…………」
「いい子だ…………。そのままトコロテンだ」
「ぇ……? ぁ……ぁぁっ……んっ……!」
ズブズブと秘所を攻められて掴んでいたモノから我慢出来ずに射精してしまう。
それを見た月島はやつと満足したように彼の中から指を引き抜くのだが、所詮それは前菜に過ぎないと言おうか……。
「しゃぶって」
「……ぅ、うん…………」
果てたところで気力もないと言うのに、下着からイチモツを取り出された山口は彼のその硬さとか大きさにゴクリッと生唾を飲み込んで、そそられた。
無意識に近づくといきり立つソレに舌を出してしゃぶって見せる。
「ぅ…………」
「初めて?」
「ぅ…ぅぅ…」
初めてに決まってる。
こんな経験しようとしたって相手がいなくては成立しない。
そしてそれは双方同意しなければなかなか出来るものではないというのも知ってて聞いてくるあたり、ちょっと意地悪だ。
山口は慣れないおしゃぶりでどうにか相手を満足させようと賢明に舌を使った。
口の中で転がすようにしゃぶって味わうようにしてみる。何度もそんなことを繰り返し彼のモノがこれ以上ないと言うくらいになった時、髪の毛を捕まれて引き離された。
「ぇ…?」
「あんまりすると出ちゃうから。その辺にしといて」
「ぁ、ぅん…」
ぁ、それじゃあ駄目なんだ…と思っていると、仰向けに転がされて上から被い被さられると手を取られて抱きつくように要求された。
言われるままにそうすると一気に突き上げられて息が詰まった。
「ぅぅぅ…!」
びっくりして声も出ないくらい戦慄いた。
顔の横に彼の顔があって彼の匂いがして汗のにおいがする。それはいつも嗅いでいるはずの匂いなのにいつものそれとは違う気がして。
どう例えていいのか分からないけど、これを嗅げるのは今のところ自分しかいないんだと思うと酷く優越感に浸れてしまった。
酷くと言うのは悪い言葉でもあるように聞こえるけれど、本当のところはそうでもなくて、それ以上ないほどの嬉しさを感じるから山口は使った。
こんなことは今までないし、これからだってあるかどうか分からない。
「好きだっ」と言えたことだって奇跡なのに、それに応えてももらっている。
生意気・口答えするな・うるさい。
どれも彼の口からこぼれればそれは山口にとっては関心を持ってもらえている嬉しさにしかならない。
抱きついて受け入れて善がれと言われれば善がる。
もっとも言われなくたってこんなことされればこんな風に乱れるわけで、山口は彼に必死になってしがみつきながら「もっと深く」とつぶやいていた。
彼のモノが中で放たれてビクビクッと月島の体が揺れる。
それに吊られて山口の体も揺れるのだが、全部出し終えるとズルリッと引き抜かれて体も離れていくととたんに心細さに襲われてしまった。
なんか…。
この終わった感がすごく切なかった。
次はいつとか、またねとか。そんな言葉が聞きたくなってしまうほど切ない。目の前にちゃんと彼はいるのに突き放された感が半端なかった。
そんなことを思っていると「服」と言われる。
「ぇ」
「時間ないよ?」
「ぁ、ごめんっ」
要するにもうすぐ用務員さんが見回りにくるから、ちゃっちゃと身支度しろと言う意味だ。
月島はもうちゃんと身なりを整えていて恥ずかしく足を開いているのは自分くらいだと知ると慌てて下着を身につけて制服のズボンを履く。
「行くよ」
「ぅ…うんっ」
窓の鍵をチェックして部室の入り口で早く来いとせかされる。山口は返事をしながら一歩足を出したのだが、ガクッと崩れ落ちてしまった。
「ぁ…あれ……」
どうして…。と自分の意志とは関係なく崩れ落ちたまま立ち上がれないで困っていると手が伸びてきた。
引っ張られて靴を履かされると「よいしょっ」と肩を担がれる。
「あ…」
「やっぱ無理させたな。歩けるか?」
「ぁ、うん…」
一歩。また一歩とちょっぴりゆっくりと歩を進めると部室を出て鍵を閉める。
職員室まで歩いて鍵を戻して正門まで行く間に用務員さんと出くわして挨拶をして校門を出た。
部活終わりにこんなことやって体がガタガタになってしまった気分だったが、心は晴れ晴れとしていた。
「こんなこと…またしたいって言ったら、お前泣く?」
「ぇ…なんで?」
「負担が大きいから」
「俺は構わないよ? ツッキーさえ良ければ別にいつでもいいし」
「…」
「けど…」
「けどなに」
「なんか終わった後が寂しいって言うか…。このままツッキーがいなくなっちゃったらどうしよう…とか思っちゃう」
「…別にそんなこと考えなくていいっ。お前は僕のものだし、お前がいなくならない限り、僕はそばにいるから」
「…うん」
「…」
ポンポンっと肩を叩かれて安心すると、覗き込まれてチュッとキスされた。
「ツッキー…」
「誰にも言うなよ?」
口止め。とでも言うようにそんなことをされると嬉しくて口元が緩む。
山口は疲れた体を引きずりながらもいつものようにはにかんで「うんっ、ツッキー…」と返事をしていた。
終わり
タイトル「サマタゲになるもの」
20160821・25