タイトル「未来は誰のためにある」

 幼い頃から姉ちゃんのお下がりばかりを着せられて必然的に女装を強いられてきた僕としては、今の環境はどうしたものかと思う反面当然とも思ってるわけで……。

 とにかく金がなかった。
契約の仕事をいきなり切られて、同時に住まいもなくしてしまった僕は途方に暮れていた。そんなに蓄えもなかったから、貯金がある内にどうにかしないといけない状況だった。かと言ってこのご時世そう簡単にしたい仕事が見つかるはずもなく、仕方なく住まいが付いてるこの仕事をすることになった。それはメイドカフェだ。
「みかんちゃん。四番テーブルにオムライスお願いします」
「はーいっ。お待たせしました、ご主人様っ」
「みかんちゃん。隣、座って。食べさせて」
「オプションになりますが、大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫。さ、まずはケチャップから」
「はーいっ」
 オプションは言わばチップ。オプションの大半が指名された本人に入るので、可愛ければ可愛いほど実入りは多い。だから僕は女の子としてメイド仕事に励んでいた。自分で言うのも何だけど、僕は女の子の格好が似合う。身長も170ないし、体もゴツゴツしてない。加えて色も黒くないから女装するとほんとに女子らしい。まったく違和感なく受け入れてもらえるほど受けが良かった。「可愛い」「俺の嫁」とか言われて働いたとたんNo.1を維持し続けている。でもそんな安定した場所を突然現れた彼・重森イツサ(しげもり いつさ)が邪魔して来たんだ。
「君、男の子だよね」
「……」
「男の子と言うよりは青年かな。ここはそういう子も働いていいんだ」
「……」
「店長は知ってるの?」
 言いがかり。と言うか、営業妨害だと思う。
僕にとってこれは非常事態だ。だからヘルプの意味を持つ左耳を摘んだ。即座に黒服よろしく店内にいるボーイがふたり駆けつけて男を店外に連れて行った。
「大丈夫か?」
 店長である三田梓(みた あずさ)が慌ててやって来て隣に座り込む。今時珍しい漆黒の髪を後ろにならして葬式スタイルの制服をピシッと着込んでいる。顔つきが凛々しいからこんなところにいなくてもいい人なんじゃないかと思うくいらだ。
「うん。でもあいつ知ってた。どうする? 大丈夫?」
「まあ。別にバレても構わないが、オプションは減るかもな」
「店長には世話になってるから僕は最低限の収入と住まいがあればいいよ」
「じゃあ、いっそそっちで売るか?」
「あーー。僕はいいけど、店のコンセプトがズレるから止めたほうが賢明かも」
「まあそうなんだが。……あいつ、知ってる奴か?」
「知らない」
「そうか……」
 その時は本当に知らなかったんだけど、後に彼はスカウトなんだと知ることになった。





 シフトの関係でみんなより早く仕事を終えてマンションに帰る。食事を作るにも何もなかったので、その前にスーパーへと寄ったらそこに彼はいた。
「……!」
「さっきはどうも。酷いな、オプションまでつけたのに」
「用はありませんよ。それに仕事外でのお客様との付き合いは禁止されてますので」
「別に誘ってるわけじゃないよ。それにオプション代金は払ってあったのにつまみ出された」
「それは店に苦情をどうぞ」
「でも君が嫌って言わなきゃ、こうはなってなかったよね」
「それはすみません。でも規定違反ですので」
「なら単刀直入に言おうか」
「……?」
「君、男の娘カフェに来ませんか?」
「はっ?」
「今度そういうカフェが出来るんで、働いてくれる子を探してるんだ。オープンからいると売り出し易いし、客もよくつく」
「ぇ?」
「ぁ、金? 金はそんなに悪くはないと思うよ。何せこの辺じゃそんな店ないからね」
「じゃなくて」
「何?」
「今までバレたことなかったのに……」
「俺には一目で分かったけど?」
「そう……」
「君はセンスがいい。今のところじゃ宝の持ち腐れだ」
「僕は別にいいよ。今のところ衣食住面倒見てもらってるし」
「そこ。君ならそんな目に合わなくてもすぐにナンバーワンになれるから、もっといいところに住めるし、いい服も着れるだろう」
「そういう意味じゃなくて。困ってる時に世話になったから移動する気はないってこと」
「全然?」
「全然。今困ってないから放っておいて欲しい」
「そう……か…………」
「そう」
「じゃあ。じゃあさ、別方向から攻めさせて」
「?」
「君が好きです。付き合ってくださいっ」
「はっ?」
「その顔が好きだ。男とか女とか関係ないっ。付き合ってる人いるの?」
「いや、いないけど……」
「別に付き合っちゃいけないって、契約にはないだろ?」
「ないけど……。その前に僕はあんたを知らないんですけど」
「それは徐々に知ってもらうことにして、まずは付き合うって位置まで俺を上げて。認識して」
「いや。いやいや。僕は今あんたと付き合いたいとか思ってないし、知り合いになりたいとも思ってないから」
「告白したのに?」
「それはあんたの勝手でしょ」
「勝手だけど、告白するのは自由だよね?」
「それはそうだけど……」
「じゃ、好きです。付き合ってくださいっ!」
「嫌ですっ」
「ちょっと!」
「強引なの好きじゃないんで、ごめんなさい」
「……まず知って。俺が君を好きなのを」
「それは他の客と同じだから」
「キス、しようか」
「嫌です」
「じゃ、セックスしよう」
「もっと嫌ですっ!」
「俺の名前は重森イツサ、二十八歳」
「……」
「君の本名は? 年は?」
「……ぃ、言いたくない」
「結構固いね」
「普通の対応だと思いますけど? 悪いですけど、ここスーパーですし、人目もありますからこれ以上注目浴びたくないので失礼しますっ」
「……」
 相手はそれ以上追って来なかったのでどうにか無事自宅まで帰れた。
「何なんだ、あの人はっ!」
 マンションの一角にある部屋まで戻ると、玄関の鍵を締めてブツブツ文句を言う。
僕のマンションは一番上の角部屋で店長の隣部屋だ。特に決められてる訳じゃないけど、やっぱり売り上げがいい人のほうが階数が上だったりする。だから今の位置に不満はないわけで、わざわざ出て行く理由がないと思った。
 自分ひとりじゃちょっと広めの部屋に住まわせてもらってる。給料もそこそこいい。職を無くした身としては、いい暮らしをさせていただいてると思う。店長も優しいし……、まあちょっと欲を言えばセクハラが強いかなってところは否めないけど…………。

 僕と店長との関係はこれを許していることが大きい。

「はぁぁっ…………。疲れた」
 とは言っても彼との間にエッチは無くて、まあちょっとそれ寸前くらいまでの関係はある。

 何と言っても最初の出会いが出会いだったから仕方ないとも思ってる。
彼、三田梓(みた あずさ)との出会いは僕がどうしようもなくなっていた時のことだった。
たまたま入った喫茶店で時間帯が時間帯だったから相席になった。向かいに座る彼が妙に人懐っこく話してきたせいで同居することになった。
「一緒に住むんならひとつだけお願いがある」
「……何?」
「貫一君さ、女装してくんない?」
「はっ?」
「女装。きっと似合うと思うから」
「えっ……と…………」
 それは僕に似合うのか? 激しく聞いてみかったが、でも選択肢はなかった。
「してくれる?」
「……着てみないと分からない」
「いいよ。じゃあまずは着てみようか」
「ぅ、うん……」
 で、着てみたらこれがまた似合ってしまった…………。
実に似合って自分でも惚れ惚れするくらいだった。僕が着たのは、Aラインのミニワンピだった。真っ赤な色をしていて黒襟フリルに黒カフス。小洒落ていて可愛かったんだ。
「ど、どう…………?」
「……うん。可愛いよ」
 黒タイツに黒いローファー。正直センスがいいと思った。
真っ赤と言っても嫌みのない赤で、これで黒いボックスバックを持ったらプロに写真を撮ってもらってもおかしくない格好だと思った。
 それから彼はそんな僕を隣に座らせてご満悦だった。
髪を撫でたり手を握ったり、僕はされるがままで半身驚いていた。世の中にはこんなことで喜ぶ奴がいるんだってことに、だ。
そしてそれを耐えれば、ここは普通に楽園だってことにも気づいてしまった自分がいるってことにも。

 僕は彼に色んな洋服をあてがわれ、日々彼を満足させた。
「可愛い。なんて可愛いんだ…………」
「……」
 彼の手は今、僕の素足を撫でていた。太ももの内側に手を差し入れ丹念に脚を触る。
「柔らかい……。まるで女の子のように柔らかいよ…………」
「……」
「嫌じゃない?」
「嫌って言うよりも、我慢出来る範囲」
「そう。それじゃあ、案外イケるのかもな」
「何が?」
「女装」
「ぇ……? 」
「貫一君さ、俺のやってる店で働いてみない?」
 言われて驚いた。そもそも勧誘なんてものされたことないから、最初は何言ってるのかと思った。
内容を聞いてみるといやらしい店じゃなかったから一応OKしてみると、店のみんなは僕が女じゃないって分かってるけど、他の人には言ってなかった。それで通っちゃうからそれでいいと思ってた。ぁ、僕の名前は木佐貫一(きさ かんいち)。今年で二十四になる健全な男子だ。
ただ、周りの見る目がちょっと違うってのは最近ヒシヒシと感じてはいる。
 彼が望むのは、僕が女装をして誘うってヤツ。でもエッチまではしない。てか、まだしてないってのが正解なのかな。
誘って誘ってギリギリまでスカートをたくし上げて、時には下着を見せて誘う。最近じゃそれ以上のこともしてるけど……。そんな僕を見ながら彼が抜くスタイル。いわゆる視姦ってヤツ。
 一般の感覚を持つ僕としては、男が僕を見ながら行為をするのを見なくちゃいけないってのは、ちょっとちょっとなんだけど、それだけでいいのならまぁいいかって感じもする。
何と言っても衣食住が確保されているのは安心出来るんだ。
「でもそろそろこれからの事も考えないとな……」
 かと言って何がしたいというわけでもない。だけどこんな生活はいつまでも続くわけないって分かってるし、自分でもどうにかしないとと思ってる。だから今ちょっと考えてるわけだけど、それから先が進まない。
「あいつの勧誘……どうなんだろう……」
 今のほうが居心地がいいから動くつもりはないけれど、そういう店もあるんだってのは知った。







 夕食を取って風呂に入ると後は寝るだけとなった時、店長の梓がドアを叩いた。
「貫一君、いる?」
「……」
 ガチャッとドアを開くと昼間のイケメン笑顔のまま室内に入ってきて僕を抱いた。
僕の服装はここじゃあ全部女の子のものだ。昼間の仕事も私生活もみんな女の子のもの。別にいいんだけどね。フワフワモコモコの部屋着を着て相手を迎える。
「寛一君は柔らかくていい匂いがするなぁ……」
「今お風呂入ったから……」
「食事は?」
「もう食べた。食べますか?」
「いや。俺ももう食べてきたから」
「……じゃあいい?」
「ぁ、はい……」
 一緒に寝室まで行くと照明のスイッチを入れながら室内に入る。僕はいつもの通りベッドまで歩くと腰掛ける。彼はそのベッド近くの床に尻をつくと僕を見上げる形でうっとりしていた。僕は彼のそんな姿を見ながらゆっくりと股を開くと自分の太ももを触る。徐々に下に、足首まで移動するとまた元の位置に戻って、それから短パンの中へと指を差し込む。
 ゴクンッと生唾を飲み込む音が聞こえる。頑張らないと。
僕はそんな気持ちで自分のモノを下着越しに握ると、もう片方の手を上半身に滑り込ませて生の乳首を摘んで自慰をしだした。
「ぁっ……んっ……。んんっ…………」
 彼の視線が僕の体を舐めている。
そう思うだけで勃起してしまうし、先走りの汁が流れる。だけど彼は僕の中には入って来ない。それで相手を満足させるのって結構至難の業で、最初はその感覚が分からなかったんだけど、今はちょっとだけ掴めた気がしていた。フワフワ短パンの裾を惜しみなく上げると半尻を披露して生のモノを下着の中でしごく。
「んっ……んっ……ん」
「……」
「んっ……」
「……」
 そうしながら乳首を触っていた指を下着の中に入れて、今度は後ろの穴を解しにかかる。先走りの汁を使って自分で自分の指を差しいれるとちょっと潤いが足りなくてジェルが欲しくなる。
「て……ぁ、梓さん」
「なに?」
「ジェル、垂らしてもらえますか?」
「ぇ、俺が?」
「だってこのままじゃ先に進めないし……」
「ぅ、うんっ」
 鼻息荒くベッドサイドにあるテーブルの引き出しからジェルを取り出すとそのまま差し出してきた。
「……」
「?」
「ジェルを僕の尻の穴に出して欲しいです…………」
「ぇ?」
「だって僕の手は両方塞がってしまってますから…………」
「そ、そうだね。そうだねっ」
「お願いしますっ」
 言うとドキマギしながらもジェルのキャップを外して手を震わせながら僕のソコにジェルを絞り出す。そんなイケメンの姿が見られるなんて僕のほうが恐縮しちゃうよ。
「ぁっ……」
「えっ?!」
「すみません。冷たくて……ちょっと声が出ちゃいました」
「ぁ、そ……そう」
「んっ……んんっ……んっ」
 ジェルの力を借りてすんなりと出し入れできるようになった指を相手に見えるように出し入れする。彼はズボンの中に手を入れると自分のモノをしごきだした。僕もそれを見て同じように服を全部脱ぐことなく半見せの状態で自慰をして見せる。
「モコモコ短パン汚れちゃう……」
「気にしないで。もっとグチュグチュして」
「ぅ、うんっ……。こう……?」
「そう。玉がちょっと見えて可愛いよ……」
「ふっ……ぅぅっ……ぅ」
 今まで後ろを弄って一人エッチするなんて考えてもみなかったけど、要求されてやってみるとこれが案外いい感じなんだ。特に見られてると余計燃える。
「ぁっ……ぁっ……ぁ……。僕もう出ちゃうんだけど……、どうしよう……」
「まだだ。まだ出しちゃ駄目だよ?」
「でもっ……でもでもっ……ぅ……ぅぅっ……ぅ」
 言われた通りどうにか射精しないようにギュッと握るんだけど今にも破裂しそうになっちゃってるモノには逆効果でドクンッと大きく脈打って下着の中で射精してしまった。
「ご……めんなさぃ……」
「俺がまだ出す前に出ちゃうとはね……」
「今日は早いね」
「……」
 言われて困った顔をすると、今度は濡れ濡れになってしまった下半身のまま後ろの穴にパールの連なった棒を入れるよう手渡される。
「次はこれ、お願い」
「……はぃ」
 一番上は小さいのに、それはだんだん大きくなっていって最後に握り棒が付いている。本当は自分でするんじゃなくてしてもらう道具なんじゃないかと思うんだけど、僕の場合は相手を喜ばせなくちゃならないらから自らして見せなくちゃいけない。
「たっぷりジェルをつけて」
「……」
「さっ、今度は下を全部脱いでいいからね」
「……ぁ、はぃ」
 ねっとりと塗れたパンツと短パンを脱ぐと、今度は彼によく見えるように大きく脚を開いて抱えてからパールの棒を秘所に埋めていく。最初はいいんだけどだんだんパールが大きくなってくるから埋め込むのも結構大変なんだ。
「うっ……うっ……う……んっ」
「キツい?」
「キツいですっ……」
「でも頑張って」
「はぃ」
「……」
「うっ……う……ううっ、う」
 最後のひとつまでキチンと入れるとキチキチで思わず息が詰まる。でもこれからがまた大変だった。だって入れたからには出し入れしなくちゃいけないからだ。僕は深呼吸してから覚悟を決めて握り棒を握ると最初からガンガンで攻め立てた。
「ああっ! ……あっ! ……あっ! あっ!」
 激しく抜き差しすると否応無く体は感じてどうしようもなくなる。
「ああっ! ……あっ! あっ! あっ!」
 体が震えて熱くなってまたモノが感じ始めている。
「汁がっ……。ぁっ…! ぁっ…! ぁっ…!」
 まだその大きさに慣れていないソコ が悲鳴をあげている。だけどどうやっても深く浅くを繰り返すと体が揺れてモノも揺れる。それを間近で見つめられるとゾクゾクする。
「ぁっ……! ぁっ……! ぁっ……!」
「貫一君の汁の匂い、いいよね。凄くいいっ」
「んっ……! んんっ…! んっ…!」
 そんなことを言われると抜き差しする勢いが余計に激しくなる。
「ぁっ…! ぁっ…! ぁっ…!」
 ぐちゅぐちゅと卑猥な音が室内に響く。間近で彼の体温を感じながら僕はまた射精していた。





「良かったよ」
「……」
 パールの棒を突き刺したまま果てた僕の頭を撫でて、晴れ晴れとした顔をした彼は部屋を出て行った。ちょっと頑張り過ぎたのかな。充実してるのに涙が頬を伝う。
「二回も……しちゃったしな…………」
 果てるのはいいとしても回数が重なると体が疲れる。
しばらくそのまま動けずにいた僕は汚くなった体を洗うために浴室に行こうと身を起こそうとした。だけどそうするにはまずは尻に突き刺したパールの棒を抜かなくちゃならなくて、ゆっくりと棒を尻から抜きにかかる。ひとつふたつとポコポコしたパールを引き抜いていくのは、いやらしい気持ちを呼び起こさせるには持って来いで、ひとつ引き抜いてはふたつ差し込むみたいな行っては来たりの繰り返しをすることになる。
「んっ…んっ…んっ…」
 結局またMAXまで入れては出すってのを四つん這いになりながらパールの棒と戯れる。
「あんっ…! あんっ…! あんっ…!」
 ガンガンに抜き差ししてモノをしごくとシーツに解放する。
「あああっ…んっ…!」
 体力の限界とは言わないけど、すり減りを感じる。
女装見せてひとりエッチ披露してなんとか暮らしを立てる。こんな日々が続くのはいつまでなのか。自分でもちょっと不安視するような毎日を送ってると思う。
「んっ……」
 ちゅぷんと音を立ててパールの棒が尻から出ていく。
「はぁぁ……」
 それでやっと一息つける。
僕は軽いため息をつきながらベッドから降り立つと、汚れてしまったシーツとか服を手に洗濯機まで歩いた。
「どっちにしても……」
 全部洗ってしまおうと着ていた服を全部脱ぐと洗濯機に放り込む。
「シーツは後だな」
 スタートのスイッチを押して今度は自分自身を洗いにかかる。
シャワーを浴びるために浴室に入るとコックを捻ってお湯が出るのを待つ。
「お尻って結構使えるんだな……」
 まずは汚れた股間と尻に湯をかけるためにシャワーヘッドをそこにあてる。暖かいお湯で心が満たされるけどシャワーは芯から暖かくなれないからそんなに好きじゃない。
「でも、これで寝られる」
 やっと一日の仕事が終わったって感じだった。
本来の僕はフワフワなパジャマは別に好みじゃない。どっちかと言えば普通の男子が着るグレーのスエットをパジャマにするのが好きだったりする。けど浴室から出てそこに常備してある下着とフワフワパジャマを着込むとそこいらじゅうの照明を切りながら寝室に向かった。
「寝よ」







「ぇっ…………」
 何で? って顔で相手を見る。
ホント何で!? っ感じだよ。昨日の今日でこうも形勢逆転するかってくらいに僕は今、目の前の光景が信じられないでいた。
「あ、ごめん。事態が変わった」
「あの……」
「ああ。これは俺から彼に持ちかけた」
「何……を?」
「俺、何も魂胆ないからな」
 そう言ったのは男の娘カフェに来ないかと誘ってきた重森イツサだった。
ちょっと場違いみたいな居心地の悪さを感じているのは僕から見ても分かる。それでもここにいるのはたぶん彼に利があるからだと思う。
 僕の前には店長・梓と彼・イツサがふたりして立っているのは不思議そのものだった。
しかも場所が僕の家ってのがいただけない。僕は昨日と同じく彼にひとりエッチを披露するために彼を待っていたのに、だ。
 オマケ付きって……。
 梓が言うには、たまたま街で彼を見かけたから『勝手にスカウトするな』って釘を刺すために話しかけたら、いつしか気が合ってしまったと言うことだ。
「気が合ったって…………」
 その言葉を聞いて僕は嫌な予感しかしなかった。
そもそもこのふたりが一緒にいること自体不穏なんだけど。で、持ちかけられたのは彼との性交渉だ。
「ぇ……彼と……? 何で?」
「俺が、見てみたいからだよ」
「……」
「ほら、俺は触って興奮するってよりも見て興奮するタチだから……」
 だから僕と彼がしているところを見たいと口にした。
「そ……んな…………」
「俺にとっては、いい話だと思ったから引き受けた。さあ、することしようぜ」
「ぇ…………」





 こうして僕は、ただのひとりエッチじゃなくて男との性交渉をすることとなった。
嫌とかいいとかじゃなくて、これは必然って言うか……。ここで暮らしたいんだったらしなくちゃならない行為。それがひとつ増えただけって感じだった。
 玄関から背中を押されて寝室に入る。
興奮しているのは梓だけだった。
高揚からか鼻息が荒い。ズボンの上からイケメンの彼がもう股間を握りしめているのがちょっと滑稽だった。
それほどまでに僕とこいつとのエッチが見たいんだと 思った。そして僕はと言えば、そんなに単純に出来るものなのかな……とも思っていた。
 勃たないんじゃない? 
 そんなことも考えていた。だけどそんなことを考えていたのは僕だけだったって数分後には分かるんだけど……。


「あっ……!」
 ベッドに腰をかけた格好で上半身を剥ぎ取られると、下半身もツルンッと脱がされる。真っ裸になった僕は彼、イツサに馬乗りになられてベッドに横になった。
「思った通り、綺麗な体をしてるな」
「……」
「男のモノは入れたことある?」
「……」
 問われて激しく首を横に振る。
「だったら俺が一番か。これは光栄」
 彼は馬乗りになったまま、これ見よがしに洋服を脱ぎにかかった。まずは上半身。
「……!」
 思ってたよりも筋肉が付いてた。
「気に入った?」
 ニタッと笑いながら立ち上がって今度は下半身を一気に脱いで全裸になる。
「…………」
 股間のモノは半勃ちで、今にも汁が滴り落ちそうなくらい震えていた。
 これを今から……?
 入るのかな……と単純に思った。でもそんなこと考えている間はそんなになくて僕は片足を取られたかと思ったら股の間に入られて尻と相手のモノとを密着させていたんだ。
「ぇ……」
「前置きなくて悪いけど、まずは一発してからにしよう」
「ちょっ……! そんなの無理だってばっ!」
「大丈夫。君は何にもしなくても俺が全部してあげるから」
「なっ!」
「まずは、その可愛いちんこを嬲る」
「やめっ」
 片足を担がれて自由にならない体で抗おうとしても無理だった。僕はまだ萎え萎えのモノをキュッと摘まれるみたいに握られるとしごかれながら、後ろの穴を勃起したモノでつつかれた。
「あっ……んっ! んっ!」
「いい声で鳴くね。これは見込みがあるな」
「やっ」
「嫌じゃないでしょ。これが君のお仕事なんだから」
「だっ……て、こ……んなのっ……んっ、ぁっ……ぁっ、ぁっ」
「大丈夫。偽物よりも本物のほうがいいに決まってるんだから」
 グリグリと穴を刺激されて腰がくねる。脚とモノを相手に支配されてしまうと逃げるに逃げられない。僕は彼にされるがまま勃起させられ滑りを帯びた穴に指を突っ込まれた。
「あっ! ああっ! ぁっ! ……んっ!」
「指は、入れたことあるだろ?」
「んっ…んんっ……ん」
「自分で出し入れして、しごいてイったことあるだろ? んっ?」
「ぅんっ。んっ」
 イエスと言うまでズブズブ抜き差しされて勃起したモノで袋をつつかれる。
「あっ……ぁぁっ……んっ」
 ひとしきり弄ばれてからいきなりギュッとモノを握られて、それにびっくりして体が跳ねる。その勢いを狙って指を引き抜かれ、ポッカリ空いたソコに彼のモノをグイグイ押し込まれた。
「あっ! あっ! ああっ!」
「ズブズブズブッ。っと、ちゃんと入ったな」
「ぁ……」
「そして動かす。ガンガンいっていいか? いくけどな」
「ぇ」
「……」
「あっ!」
 両方の脚を担がれたかと思ったら、いきなり激しく腰を打ち付けられて体がバウンドする。
「さすがに毎日パール棒で遊んでるだけあるな。ちゃんと俺のを受け入れてる」
「んっ! んんっ! んっ!」
「店長さん、見てる? もっと近くで見てもいいんだよ?」
 グイグイねじ込みながらイツサが近くにいる彼に声かけする。彼・梓はズボンを膝まで下ろして蕩けた顔で勃起したモノをしごいていた。
「見てる。見てるよ……。もっと近く? ああ、そうか。もっと近くで見てもいいんだ…………」
 言いながら下半身をすべて脱ぎ去るとモノをしごきながらすぐ近くまで身を寄せてきた。
「今からこいつに射精させるから浴びるかい?」
「ぇ……?」
「ぇ……!?」
 同時に声が出てしまったけれど僕に拒否権はない。
入れられたまま床に立つと壁に手をつくように言われた。壁と僕との間に梓がしゃがみ込んでいる。僕は後ろからイツサに入れられたまま両手を壁につくしかなかった。
「片脚をあげて壁につけて、片手で自分のモノを握って。ちゃんと彼の顔に射精出来るように頑張ろうな」
「ぇ……ぁ、はぃ…………」
 どう答えていいのか分からなかったけど、反射的にそう答えていた。
しっかりと壁に片脚をつけると確かに的には当たり易くなる。下半身裸で正座してモノをしごいている梓を見ると、恍惚としていて顔射されるのを心待ちにしている。ああ、ここは本当に頑張らないといけないところだ。
 片脚を踏ん張ると尻にも力が入ったのか、イツサのモノを刺激してしまったらしい。
「咥えるのが上手いよ」と言われて返す言葉がなかった。
「…………」
「じゃあ、俺は余った手で寛一君の乳首でも触るかな」
「ぁっ……!」
 ギュギュッと乳首を摘ままれて、それからゆっくりと揉まれる。揉まれながら腰を掴んだ手を引き寄せられて後ろからの抜き差しが開始された。
「ぁっ……ぁ……ぁぁっ…………」
「自分のモノは自分でしごくんだぞ? 彼が君の精液を浴びたがってる」
「うっ……んっ! んっ! んっ!」
 そんなことを言われるとキュンキュンして、また尻に力が入って彼のモノを締め付ける。ガンガン攻め立てられながらモノをしごくと、しごいているモノが壁との間にいる梓の顔に触れてしまう。
「あっ! ぁぁっ……! ぁっ! ぁっ!」
「いいね。ご主人様の顔にちんこを押し付ける下僕っ。ちゃんと顔射してやれよ?」
「んっ! んっ! んっ!」
 両手で腰をしっかりと掴まれて後ろからの突き上げが激しくなる。僕はそんな彼に翻弄されるように夢中でモノをしごくと梓の顔めがけて射精していた。
「ぁっ……ぁ……ぁぁっ…………!」
 ドクドクドクッ! と濃厚な白い汁が梓の顔に髪に当たる。彼は口を開けて有難そうに僕の汁を味わっていた。
「凄いっ……! 凄いよ、寛一君っ…………! 俺はもぅっっ!」
 視界に入った限りじゃギュウギュウ握りしめて射精してたって感じだった。僕は僕で後ろからの突き上げに善がりに善がって、いつにない甘い声をあげていた。射精した後も疼いた尻が彼を受け入れて止まない。突き上げが終わらないから、いつしか僕は両脚を壁につけた形になってしまいやっと中で射精してもらえた。
「ぅっ……ぅぅっ……ぅ」
「いい感じだっ。素質あるし、俺との相性もいい。これは継続希望だ、店長」
 ぇ…………?
「いいよ。俺もこんなに感じたのは初めてだ」
「じゃあ継続ってことで」
「ぇ……。僕の意見は?」
「君はこの条件を飲まないとここにいられないだけだから。明日から路頭に迷うか、俺を毎回受け入れるか、どっちかの選択しかないよ?」
「ぇ……」
「路頭に迷うのは、嫌だろ?」
 言われて『やっぱりな……』と思うしかなかった。
僕にとってはパール棒か肉棒かの違いしかなく、その二者選択しかない。路頭に迷うのも嫌だし、こんな生活も嫌ってわけじゃないからするけど、本当にこれでいいのかは分からない。分からないけど、とりあえず一日目は終わったと安堵した時、体を持ち上げられて今度は床に四つん這いにされて後ろから覆い被さられた。
「俺、一度や二度じゃ満足しないから、今度はマジで突き上げるからよろしく」
「まっ……まだ?」
「まだ。これからが本番だから」
「ぇぇっ!?」
 それから僕はイツサに突き上げられて二度三度と彼の精液を注ぎ込まれた。注ぎ込まれてからパール棒で栓をされて自慰を披露し、下の毛を毟り取られて悲鳴をあげた。
「顔が可愛いんだから、お股も赤ちゃんみたいじゃなきゃな」
「ひっ! あっ! やっ!」
「嫌じゃないっ! これはお前のご主人様の意向でもあるっ。なっ?」
「うん」
「ぇ?」
「寛一君は可愛いから、やっぱり赤ちゃんみたいなのがいいよ。ちんこは大人だけど可愛いから許す」
「はい、決定! ちゃんと引っこ抜くからおとなしくしてろよっ」
「ひいっ……! ひっ! うっ! 痛っ!」
 ちょっと血が滲んでる。ほとんど引っこ抜かれてツルツルになった僕は昼間の仕事着を着せられた。
「ノーパンミニスカだっ」
「お辞儀してみ」
「……」
「早く」
「はぃ…………」
 言われるままお辞儀をすると、後ろからふたりに覗き込まれて変な気分になる。
「寛一君、パールの尻尾生えてて可愛いよ」
「それにノーパンだから袋が見えそうで見えなくてそそられるね」
「…………」
「ちょっと脚開いて」
「開いて」
「……はぃ」
 するとどうしたって袋が股の間から見えてしまう。
それにまたふたりが気を良くして上機嫌になる。僕は四つん這いになって短いスカートを捲られるとパール棒を抜き差しされた。
「あっ! ぁっ……! ぁぁっ……!」
「腰が揺れてるけど?」
「だっ……だって…………」
「射精したい?」
「したいっ……!」
「でもまだ駄目だよ。ご主人様がいいと言ったらだから」
 イツサはそう言った。そして主人の梓は床にぺタンッと座り込みながら僕を見てモノをしごいていた。
「どうします?」
 イツサが彼に聞く。僕は四肢を床につけながら腰をくゆらせていた。
「触らないで出して」
「だそうだ。頑張れ」
「ぁ…………」
 それからパール棒を抜き差しされながら必死になって腰を揺らして射精しようとした。だけど袋やモノがペチペチ言うだけでなかなか進展はなくて、徐々に萎えてしまう。仕方ないので胡坐をかいたイツサがモノをしごいて上から乗るように言われた。
「固くなったから棒を自分で抜いて自分で俺のモノを入れてみろ」
「ぅ……ぅん…………」
 射精しないと終わらない。
そう思っていた僕は四つん這いのままゆっくりとパール棒を引き抜くと、それを床に放り出して胡坐をかいたイツサの上に椅子に座るような感じで座りにかかった。
「うっ……うううっ……」
 自分の重みで彼のモノが埋まっていく。パール棒とは全然違う脈打つ肉棒は僕の中でヒクヒクしていた。
「自分でパウンドしてみろ。射精するまで動き続けろ」
「は、はぃっ…………」
 目の前にはモノを握る梓がいる。彼を満足させないとこの行為は終わらないし、僕が触らずに射精しないと終わらない。僕は必死になって彼の上でバウンドするといい角度を探し当てようとした。じゅぷじゅぷと結合部分から卑猥な音がする。
「あっ……ぁっ……ぁ…………」
「中で出した俺のモノが溢れ出てきていい感じだろ?」
「ぅっ……んっ……んっ……ん」
「触るなよ」
「ぅんっ…………」
 脚を開いて腰をくねらせ、おねだりするように唇を舐める。
「ぁぁぁっ……いいよ、みかんちゃん…………。お尻に男を入れながら善がるなんて…………」
 はあはあ言いながら言われると、どうしようもなくて身が震える。それと同時にモノからチョロチョロと汁が垂れて床を汚した。
「ぁぁぁ…………」
「貧相な汁だな」
「今日は何度も出してるからね、仕方ないよ」
「仕方ないな。だったら床に射精した自分のモノを舐めてもらおうか」
 イツサにニコニコして言われると梓もそれに同意した。
逆らいようがなくて僕は自分の放ったモノの処理をするために床に這いつくばって舌でソレを舐め取った。空洞になっている尻からは彼が中に放ったモノが垂れてまた床を汚している。それも舐めるんだろうか……と漠然と思っているとタオルを尻に宛がわれて恥ずかしくなった。
「ぁ…………」
「今日は凄く良かったよ。また、してもらうから」
 いいよね? と梓がイツサに問うと彼は快くイエスと口にしていた。
「どうやらお初を頂戴したみたいだし。スカウトは失敗したけど、頂くものは頂けた俺としては満足してるから。また呼んで」
「ああ。またよろしく」
「…………」
 この時も僕の意見は関係なく事は進んだ。
とりあえず。とりあえず僕はこれで安泰ってことだよね? 
好きでもないけど嫌いでもないこういう行為。外見だけで行ける内に、せいぜいいっぱいお金貯めなきゃ。
口にはしないけど、精液まみれの僕は虚ろな眼差しでそんなことを考えていた。
終わり
タイトル「未来は誰のためにある」
20210112・15