タイトル「今日の相手は三人だけど」
拓馬純一(タクマ-ジュンイチ)21歳はただいまバイト中である。
仕事は接客業。「ご主人様、お帰りなさいませ」系だ。
ただし執事カフェではない。メイドカフェでもない。言うこと聞く系なバイトだ。
お触りなしのご奉仕バイト。それは時に辛くて時に恥ずかしい。
それでも続けているのは時給がいいからだ。
それに体力的にキツくない。それがまたいい。
時々キツいこともあるけれど、時々だから許容範囲なのだ。
「俺今日午後イチから三時間入ります」
「ぇ、夜入らないのか?」
「嫌っすよ。夜は変なの要求してくる客いるし」
「お前さ、自分が1っての分かって物言ってる?」
「俺、そういうの別にどうでもいいんすよ。月にいくらか暮らせるだけ貰えれば」
「欲がないってのもいいけどさ、客商売ってのは欲しがる客と与える奴あっての商売だぜ?
「お前を」ってご指名あっても「いないんです」ばっかじゃ通らないって」
「そりゃそうだけど、俺学生だから勉強とかしたいんだよね。留年したくないし」
「それを言われるとな………」
「それを言わせないでよ。俺もまた落ち着いたら夜出てもいいし」
「分かった分かった。ただし今言ったこと忘れるなよ」
「了解っ」
純一は軽く微笑みながらロッカーを開けると制服に着替えだした。
綺麗にクリーニングされた白シャツにタイトな黒のスラックス。よく磨かれたエナメルの靴は先が尖っていたりした。
その白シャツを第三ボタンまで大きく広げるとチラリと素肌を見せる。手にしたクリームで軽く後ろに髪を流した髪型はここでしかしない。
最後にフォルダーネックになっている黒のベストを身につけるとここでの姿は完成だった。
可愛らしいと言うよりは小生意気な顔をしているせいで集まってくる客は虐められたいヤツらばかり。
「「今いるよ」」
自分のブースに向かう途中、スマホで宣伝すると五分と経たない内に客が来る。
「ジュン君にっ!」
「申し訳ございません。ただいま接客中なので順番待ちとなりますが………」
それでもいいと待ち続ける客が出だすが、三時間だけ働くと公言されているため取れる客も後ふたりが限度。
一人目の客が部屋に入ってすぐ。部屋がノックされてマネージャーが顔を出した。
「いらっしゃいませ」
ゴキゲン取りの微笑みを客に見せると純一に小声で「一時間ね」と念を押して部屋を後にした。
「ひとり一時間だけだから、延長とかなしね」
「ぁ、ああ」
一番最初に来たのはいつもそのへんをウロウロしているゴロツキの波さんだった。
波さんの顔は怖い。昔のヤクザ映画に出てくるような掘りじゃなくてシワの深い、やけに日焼けした肌をしていた。
目つきもなんと言うか………ギロギロしてる。ギラギラじゃなくてギロギロだ。
そして落ち着きがない。終始回りを気にしている感じがする。だからゴロツキだと純一は勝手に思っていた。
「波さんさ、何してお金稼いでるの?」
「金転がしかな………」
「よく分かんないな………」
「いいんだよ、分かんなくても。ジュンはさ、俺を楽しませてくれればそれでいいんだよ」
「オッケー」
お触りなしの個室と言うのは、あくまで客側からのお触りはなしと言う意味で従業員からのお触りはアリアリなのだ。
だから向かい合って座る形を取っていたのもつかの間、純一は座っている相手に跨がると密着するようにしっかりと抱きついたのだった。
「ねぇ。こういうの普通は綺麗なお姉さんにしてもらったりすると気持ちいいんだよね?」
「普通はね。だけどおじさん、いい匂いのする男の子がいいわけよ。ほら、当たるものもダイレクトに当たるだろ?」
ニヤニヤなしがらそう言ってくる波さんはちょっと興奮しているようだった。
だからもう少し興奮させてあげようと純一は腰をゆっくりと回してみた。
「波さん…波さん……波さん………」
何度も名前を呼びながら腰を振る回数を増やす。
グイグイと相手の股間に自分のモノを押し付けるようにして耳たぶを舐めたり甘咬みしたりする。
それだけで相手は気を良くして純一の腰に手を回すのだが、一度そこに置いた手を動かしてはいけないルールだ。
純一が跨ってる以上椅子から立ち上がってもいけないどころか卑猥な動作をしてもいけない。
それがルールだ。
最初からルールを守れないと思える相手は椅子に固定されてのサービスとなる。
それでもいいと言う客が集うこの場所は異端な場所として有名でもあった。
純一に攻められて波さんは衣服を身につけたままビクビクッと体を震わせて自らを満足させた。
一時間と言う時間制限の中、甘い囁きに二度三度と達して満足した客は着替えることなど許されずそのまま退席となる。
その後どこかで着替えるのか、そのまま帰るのかは謎だか、純一はそこまで関知していなかった。
「終わった」
ブースのインターホンでフロントに連絡を入れると換気扇をMAXにして除臭スプレーをかける。
使い捨ての手袋をしてウエスで客が座った場所とか触った場所を除菌スプレーを使って綺麗にすると
自分自身も再びロッカーに戻って下半身だけ綺麗なものに着替えた。
こういうところに来る客は独占欲を満足したがるのが普通だ。
他の客の臭いなんて嗅ぐのも嫌なのは言うまでもなく、純一自身も新たな気持で客と接しなければやってられないと言うのもあり徹底していた。
言っておくが他のヤツらがどうやっているのかはそれぞれだから分からない。
「次、入れていいよ」
ブースに戻ると再びインターホンを入れる。
次の客はまたタイプの違う客で見られたいタイプ根津さんだった。
根津さんは電気メーカーの営業で時間が取れるとここに来て満足して帰るってのを繰り返している。
最初に名刺とか渡してきてビックリしてしまった相手でもある。
「いらっしゃい」
「やあ。たまたまこっち来ててジュン君の連絡見てね。会えてラッキーだったよ」
「一時間以上待ったのに?」
「うん。その間に仕事して一件取って来たから」
「すっごい」
「これで今日の仕事はもう終わり。リラックス出来るよ」
ふふふっと笑って背広を脱ぐとネクタイを緩める。
「今日はどうするの?」
「全部脱いでもいいかな。また会社帰らなきゃならないしね」
「いいけど、そうすると俺は直接抱きつけないけど?」
「我慢する」
「じゃあ椅子はこっち使用がいいよね」
相手が服を脱いでいる間に客が使う椅子を変形させる。と言うか部品を加えて形を変えてみる。
「こういうの好きだよね? こんなんでいい?」
「ああ。いいね、楽しみぃぃ」
全裸になって全身綺麗にするために濡れタオルで体を隅々まで拭きながら明るく答えてくる。
こんなところが好きだったりする。
椅子の形はちょうど産婦人科で診察してもらう時に乗る診察台のような感じで
大きく脚を開いて座る形になっていた。
根津はその椅子に座ると手足を固定されて羽や筆で全身を触っていたぶられる行為が好きだった。
「うっ………ぅぅぅ………ぅ………ぁ………いいっ………ひっ………」
胸に筆で字を書いて当てるゲームをしてから乳首攻めをする。
その頃にはもう一度果ててしまっている始末で、それを責められると泣いて詫てくる。
ただしこれは嬉し泣きだ。
よがり声の中、「ごめんなさい」だの「すみません」だの言うので
「もっと丁寧に言わなきゃ許してやんないよ?」と言うと
ヒイヒイしながらも「も…申し訳ございませ……ん………」と体をくねらせながらよがり声を出すのだった。
「仕方ないなぁ………」と次には腋を攻めて臍を攻めて最後に尻を攻める。
中に入れるんじゃなくてひたすら穴を筆でなぞるのだ。
そのシワの一本一本を確かめるように顔を近づけて時には息を吹きかけながら続けてやると
二度目の射精の時がくる。
「あ……ぁぁっ………で…出るぅぅっ!」
しかしそれは自分の腹に顔にと飛び散るだけで、モノは誰にも触ってもらえずに虚しくヒクついているだけだった。
純一は筆を放り出すと使い捨てのゴム手袋をつけてオイルを手に根津の脚の間に入った。
そして股間にオイルを垂らすとズブッと秘所に指を入れて内部を弄った。
「ぐっ! ………ぅぅ………ぅ………」
「ご褒美」
「んんんっ………ぁ………。くっ………!」
「前も触って欲しい?」
「欲しいっ!」
「駄目。前は自分で後でシコってよ………っと」
グイグイと中に入れた指をもっと中に入れてみようとするのだが、もう根本まで入ってしまっているのでそれ以上は無理だった。
一本だった指を二本に増やし出し入れをすると根津のモノが勢いよく復活してくる。
「後一回出したらそこで終わりだからね」
「は………はいっ………! っ………くぅ………ぅ」
純一は時計を気にしながら指を三本に増やし四本に増やした。
「あっ…んっ! んんっ……! んっ! ん……はっ………ぁ…!」
「もうそろそろ時間だよ?」
「うっ……う…うう………っ!」
何度も何度も出し入れをしているとズブズブズブッと音がしそうなくらい根津のソコが緩くなる。
「あー入れたいっ」
「入れて! 入れてくださいっ!」
「駄目ー。お前みたいな下種に誰が入れるかよっ。このクズっ! 下種っ! ケツゆるゆるじゃねぇかよっ! いったい何人に突っ込んでもらってるんだよっ!」
ヌプッと指を引き抜くと手近な引き出しからバイブを取り出してオイルで濡れた手でぬめりをつけると先っぽだけをツプッと入れ込んだ。
「オキャクサン。ナマ駄目ネ。ユルユルダシ」
クククッと笑いながら勢いよく根本まで入れてから出し入れをするとおもむろにスイッチを入れる。
すると根津は「あぁぁぁっ………!」と体を震わせ腰を激しく振りだしたのだった。
純一はそれを見ながら手袋を外しカウントダウンを始めた。
「30.29.28.27.………早くしないと時間が来ちゃうよ?」
「う……うう…。ああ………んっ………!」
「20.19.18.17.………」
激しく振り続けられている股の間で、純一はもう一度筆で今度は内股を行き来する。
それが良かったのか、根津はドクドクッと言うよりはトロトロッと今度は勢いのない射精をしてガクッと体の力を抜いたのだった。
「はい。終了ーっ」
「ふ………ぅぅ………ぅ………」
二人目の客が喜んで帰って行った後、純一は部屋の掃除をする前に椅子に座り込んだ。
「チッ………」
勃起したじゃねぇかよっ。
ここで一発抜いておくか、それとも沈めるか微妙なところだなと思っているとコンコンコンッとドアがノックされる。
返事をする前にドアを開いて入ってきたのは隣のブースにいつも配置されている30男の瀬良さんだった。
こんな年になってもこんな場所で食っていってるなんて、なんて人なんだと思ったこともあるが
要するに今の純一と同じで働きたい時にしか働かないのを選んだ人なのだと最近理解した。
でもその割に瀬良さんは雑誌に出てきてもおかしくないほどのイケメンオヤジで
オマケに入れて欲しがりやさん。
今も他人のクサイ臭いで充満した部屋に顔ひとつ歪めずに入り込むと純一の目の前にしゃがみこんだ。
「勃起した?」
「…少々」
「じゃ、咥えさせてくんない?」
「なんで?」
「一万払うから」
「あんた、何のために働いてるんだよ」
「ジュン君のしゃぶるため?」
「バカだな」
「うん」
「ほんと馬鹿だな………」
「うん」
ここで「いいよ」と言ってしまうとまた駄目なんだろうなと思いはしたが
恋しそうに潤んだ瞳で見つめられると邪険には出来なかった。
「金はいいから処理してよ」
「え、いいの?!」
「いいよ」
金はいらないともう一度言ってから股間を晒す。
まだそんなに制御出来ないほどの勢いではなかったが、むしゃぼりつかれて高速の舌技で刺激されるとそれは一気に大きく堅くなった。
「う……ふぅ…ふぅ………ん………」
「ちょっ………あっ………そ……んなにっ…………!」
まるでお預け食らった犬が飯にありつくみたいに瀬良さんは純一のモノをおしゃぶりし、口をすぼめて出し入れも繰り返してきた。
「ふぅ……ぅ…うう………」
「あっ……ぁ………ぁぁっ…んっ………!」
ものの数分で純一は昇天させられた。
瀬良さんはヘラ顔で自分の股間と尻を服の上からしきりに触って即座に自分のブースに帰って行った。
たぶん今から前も後ろも自慰するんだろうなと思う。
「てか、聞こえるっ!」
凄いよがり声が聞こえて苦笑するしかない。
純一は今度はノロノロと部屋の掃除をすると仕方なく最後の客を迎えるためにインターホンに手を伸ばしたのだった。
「次、入れていいよ」
終わり
20151017