タイトル「A佐助受」

A佐助受
「わっかんないかな……。お館様は旦那のこと綱引き合戦で負けたってだけで、ぶん殴るのが嫌なんじゃないか」
「なっ……なんと………寛大な…………。そのようなお考えであろうとは……。某、とんと察しが付かずっ………。………佐助っ!」
「おっきな声出さない。目の前にいるんだから」
「すっ…すまぬ」
「じゃ、もう館に戻りましょうか」
「ぅ…うぬ………」
 教室を出て下駄箱に向かっている途中。もう少しで下駄箱だと言う一本廊下で、向こうから突進してくる影が見えた。
「さーすーけーっ!!!」
「ぅわっ!」
「ぬっ?!」
 よくよく目を凝らして見ると、それは三年のかすがだった。制服のスカートを翻し、目標をまっしぐらに目指す姿はさすが忍。
 二度目の言葉が届くか、身が到達するが早いか、目も止まらぬ勢いで佐助の元にきたかと思ったら、次には佐助の胸倉を掴んで、その体を揺さぶっていた。
「佐助っ! 返しなさいよっ!」
「え? 何のこと?」
「さっきのあれよっ! あれっ!」
「えっ……と…………」
「しらばっくれるんじゃないわよっ! ウチの組が戦ってる時に、くすねたでしょっ!!」
「だから何? 何のこと言ってんだよ」
「もぅぅっ! 薬よっ! 薬っ! あたしの秘薬、どこにやったのよっ!」
「……ああ、あれね。あれは、あんたが持ってても何の意味もないから、俺サマが別ルートで流してやるよ」
「なっ! そっ…んなことは、あたし自身が決めることっ! さっさと返しなさいよっ!」
 胸倉を掴まれたままブンブン力任せに縦横上下に振るわれる。それを横で見ていた幸村は、大きくため息をつくとひとり歩きだした。
「ぁ、旦那っ!」
「先に行く」
「そ…そんなぁ……」
「あんたも一緒に行きたきゃ、さっさと秘薬返しなさいよっ! 先輩の言うこと聞きなっ!」
「えぇぇぇぇ………」

 結局、幸村は佐助をその場に置いたまま館へと帰って行ったのだった。
「だっ…旦那ぁぁぁ……!」
「知らんっ!」



 そして自宅。お館様の隣の棟にある自宅に帰ってきた幸村は、口をへの字に曲げていた。「気に食わぬっ!」
 何が気に食わないのか、考えてみるのだが、その全部が気に入らないのだから、どれが…とか特定出来なかった。
「ぬぅぅぅうぅぅぅぉぉぉおおおおおっ!!」
 雄叫びをあげながら玄関に入ると乱暴に靴を脱ぎ、自室に向かう。そして自室への障子を開けて一歩中に脚を踏み入れると、サッと部屋の隅に佐助が現れた。屈んで跪くと第一声。
「さっきは、すみませんでした」
「ふんっ!」
「………」
「佐助っ!」
「はっ!」
 ピッと手を差し出す幸村に、素早く佐助が応じる。佐助は差し出されたその手にサッと包みを握らせた。
「………何だ、これはっ」
「三時のおやつ、団子です」
「そっか。……じゃなくてっ!!」
 握らされた包みを床に叩きつけようと振り上げるが、やっぱり惜しくなって机に置く。そしてもう一度、幸村は手を差し出してきた。
「んっ…!」
「えっ………っと………………」
 今度は何を差し出せばいいのかな…と、ほっぺたをかいて相手を見てみるが、それ以上の言葉がない。
「旦那。団子は一日三本までって、お館様と約束しましたよね?」
「そうではないっ! かすがから取り上げた秘薬を出せっ!」
「ぇ…」
「秘薬なのであろうっ! 何に効くっ?! 早よぉ出せっ!」
「え……っとぉぉぉ………。あれはですねぇぇ…………」
「お主。まさか取り返されてノコノコ帰ってきたのでは、ないだろうなっ!」

B佐助受→媚薬攻      C佐助受→縄地獄