タイトル「迫り迫られ」

「くまりん」と呼ばれる男がいた。年は36歳。
体格はクマと言われるだけあって少し筋肉質と言うかぽっちゃり寸前と言おうか、
とにかく全身が毛に覆われたら即座に熊と言っても通じるだろう大柄な男だった。では中身はどうだろう。
ここで言う中身とは性格のことだったりする。
顔を見る限りでは精悍……とは言えなくて、どちらかと言えばボーッとしている。
ちょっと疲れたオヤジと言う感じだった。本当の名前は熊井圭太/クマイ-ケイタ。だから通称「くまりん」なのだ。





「くまりん先輩っ。そろそろ出かけましょうか」
「うぉっ?! もう昼休み終わりなのか?」
「そうですよっ。昼からは外回りしますよって朝礼終わった時言いましたよね?」
「ぅ……うん…………。ちょっと待って……」
「はい。なるべく早く支度してくださいね」
「うん……」
 ぬーぼーとしているので動作がスローモーションに見えたりする。
もっともそう見えるのは話しかけてきた「うさきち」だけで「くまりん」としては寝起きで一生懸命な動きでもあるのだが、毎度のごとく分かってもらえていなかったのだった。 
 話しかけてきたのは後輩の通称「うさきち」。本当の名前は宇佐瞬吉/ウサ-シュンキチ・27歳。優男だった。
顔は見た目通り優しげなのだが、駆け引き上手と言おうか、営業職に実に向いている男とも言えたのだった。

「うさきち」は「くまりん」が支度をしている間に自分のカバンからノートを取り出すと書き込みを始めた。
「……まだですか?」
「うん、ちょっと待って。トイレ行ってきていいか?」
「いいですよ。でも五分後には出ます。僕は先輩がトイレに行っている間にエンジン温めておきますね」
「ああ。悪いな……」
「いえいえ。ぁ、先輩のカバンも持っていっておきますから、そのまま車のほうに来てくださいね。分かりましたか?」
「ああ」
 ちょっと前屈みになりながらトイレに急ぐ姿は、ちょっとばかりみっともないような気がしないでもないが、「くまりん」はそうしないと漏れてしまうので賢明だった。
 数分後。
ようやくトイレがを済ませた「くまりん」は社屋の外へと急いだ。言葉通り「うさきち」は車のエンジンを温めて待っていてくれた。
「くまりん」を見つけると、こっちこっちとばかりに手を振ってくる。
「ごめんごめん」
「いいですよ。それじゃ出発しますね。シートベルト締めてください」
「はいはい」
「くまりん」は何故こんなに行動が鈍いのか。それは体質としかいいようがないのだが、季節的な問題でもあったのだった。



 季節は冬。
熊と言えば普通は冬眠するのに、こうして実社会に出ているとそうもいかずにひたすら我慢をしながら生活を送っているのが彼らの現状だった。
「くまりん先輩、今日は特に眠そうですね」
「ああ。真冬に近づいてるのに陽気がいいせいかな…………」
「僕はそうでもないんですけどね」
「お前は…やっぱウサギだから元気いいんだろ?」
「まあ悪くはないですけど…」
 そんなことを言い合いながら取引先を回る。
くまりんたちの仕事は主にリースしているコピー機やパソコンの差し変えや修理。
修理とは言っても自分たちでその場でするというよりは修理する部門に持って行き、代替え品と交換するというのが主な仕事だ。
「そういえば今度パソコンの新しい機器、交換していくみたいですよ?」
「ああ。聞いてる。だけどそうなると色々と入れてるソフトの問題も出てくるから厄介だよな……」
「で、勧めるのが」
「クラウドか?」
「ええ。いいんですけどね…。僕としては自社管理のほうが安心な点が多いと思うんですよ」
「ま、一概には言えんからな……」
「そうですけど、その手続き教えるの僕たちなんですからね」
「うん……」
「先輩ひとりで一社任せても大丈夫ですか?」
「何その出来るかな心配」
「この時期眠いでしょ? ウトウトされると一社一日じゃ終わらなくなるから」
「……じゃあさ、みんな集めて説明会みたいな感じでやればいいんじゃなかい?」
「みんな集めてですか……」
「みんなに会社に来てもらって、そこで説明 とかいいんじゃないかと思うけど」
「……一度当たってみますか」
「会議室一番大きいところ今からキープな」
「はいはい」
 こうして新しい機器を導入させるのに動き回ったふたりは、各社の社員を自社に呼び出し詳細な説明をした上でクラウドサービスへの移転にこぎつけたのだった。
「クラウドのトラブルはウチの会社じゃ無理だから納得してもらえて良かったよな」
「いやそれ納得いただかないと先に進めませんしね」
「あーいやまあそうなんだけど……」
「それより先輩、僕今回案外頑張りましたよね?」
「うんうん。ノロマな俺の四倍は活躍してたんじゃないかな」
「だったら……。ね?」
「え?」
「僕、大健闘したのでご褒美が欲しいんですけど」
「あ……。ああ、そういうこと…………」
「はいっ」
 捻り寄られてようやく相手の意図することが分かった。
 このふたり、そういう関係なのだが深い仲とも言えなくて……。
こんな時にだけいい関係を気づこうと、うさきちのほうが賢明になってくるのだった。
と言うのも、うさきちはくまりんのゴツい体が大好きなのだ。
自分のしなやかな体でくまりんを喘がせるのは至福の喜びと言おうか……。ことあるごとに関係を迫っては甘い汁を啜っていたのだった。





「おい。おいってば……。ちょっ……そんなとこ舐めるのやめろってばっ……ぁ……んっ…………」
「先輩。相変わらず感度がいいから……僕もう出ちゃいそうですよ……」
「あっ……」
 場所は、あえて「くまりん」の家。
そして「くまりん」のベッドで全裸になってお互いを舐めあう前擬からだったのだが、いつの間にか「くまりん」は「うさきち」にいいようにされていた。
大きく開いた足の間に陣取られ、毛むくじゃらの股間に顔を埋められる。
勃起しているソコを狂おしいほどにしゃぶられ吸い取られると、その汁を後ろの穴に塗りたくられていた。
「くまりん先輩の尻は筋肉質で逞しいですよね……。その尻を犯すことが出来るなんて、なんて僕は幸せ者なんだろうって思いますよ」
「そ……んなこと言ってないで……。さっさと入れたらどうだ」
「はいはい。じゃあ、うつ伏せになってお尻大きく上げてください」
「分かった分かった」
 言われるままに大きく尻をあげると足をこじ開けられて尻のソコに勃起したモノをあてがわれる。
「いきますよ」とも言わずにいきなりの挿入はいつも驚かされる。
「うっ…! ううっ…」
「あー。狭いっ。狭いっすよ、くまりん先輩っ……」
 悦に入りながら「うさきち」がそんなことを口走る。
「くまりん」はそれに応える暇もなく、キツキツのキツさに耐えながらユルユルになるのをひたすら待つのだった。
 ズブズブと後ろから挿入されて嫌と言うほど前をしごかれて、出る寸前で爪を立てられるとブルブルと震える。
その繰り返しで時間が過ぎ、気がつくと明るかった外がすっかり暗くなっていた。シーツは精液まみれだし、自分たちもグダグダだ。
「あーーーー…………」
「まだまだですよ」
 違った。疲れているのは「くまりん」だけで、まだまだ「うさきち」はやる気満々だったのだった。
「まだするのか?」
「だって先輩なかなかさせてくれないし。こんな時だから堪能しないと。次はいつあるか分からないわけだし……」
「えーーー…………」
 この言い方だと十分に餌を与えていればこんなに凶暴かしないんですよ、僕。と言ってるみたいだった。
それからも「くまりん」は精液を絞り取られるかのように入れられて自分は彼の中に出すことも許されなかったのだった。

 さすがに疲れたのか夜中になるとふたりして眠りについた。
汚らしいシーツの上だと言うのに、眠さのほうが勝ってしまったのだ。それに翌日はまた仕事なのだから寝ないとやってられないのだ。
寝ている「くまりん」の体を「うさきち」が弄ってくる。
「もう……やめろって…………」
「うーん……。お乳吸わせてくださいよ…………」
 そんな声で甘えられると嫌とは言えなくなる「くまりん」なのだった。
終わり
タイトル「迫り迫られ」-擬人化街生活- 20161011