タイトル「聖執事-零」試読
「ふぅ……」
終わった。
何とか無事に主と行為が出来てホッとするが、これから貴崎には報告が待っている。
疲れた体を引きずって自室まで戻ると、改めて身なりを整えて執事長が待っているキッチンの横にある執事が待機する執事室に急いだ。
「失礼します」
ノックをして中から返事があるのを確かめてからドアを開ける。
中には執事長である一ノ瀬富海(いちのせ とのみ)が読んでいた本から顔を上げていた。漆黒の髪を綺麗に撫でて執事らしく襟足も整えている執事の鏡のような人物は三十八歳の独身で、顔は少し女性的な印象もあるが体を鍛えているので、そのアンバランスさからか妖艶な雰囲気も醸し出していた。
「遅くなってすみません」
「ご苦労様。で、どうでした?」
「はい」
「若は君を受け入れてくれましたか?」
「はい。突然のことだったにも関わらず思いの外、事はスムーズに進みました」
「そうですか、良かったですね。……と、言うとでも?」
「ぇ……」
「相手との辻褄合わせは簡単です。したことにしようと言い合ったのでは?」
「そ……んなことはっ……!」
「では、確かめても?」
「ぇっ……どっ……どうやって……」
「体を確かめるしかないと思うのですが、君はそれ以外に方法を知っていると?」
「い、いえ……分かりません……」
「では、確かめます」
「……」
「いいですね?」
「……はぃ」
貴崎は彼に手招きされて近くに歩み進んだ。
彼、一ノ瀬には執事長としての尊敬もあるのだが、それ以外に今回のことでは手取り足取り教えてもらっている。だから「確かめる」と言われれば、つまりそういうことなのだろうな……と頭を過った。
近くまで来ると両の手を取られて座ったまま見つめられる。
「よくやったと言って欲しいですか?」
「……」
出来ればそう口にして欲しい。でも、どうやらちょっと疑われているのも事実で。どう答えたらいいのかが分からずに口を噤む。
「君はまだ若い。相手を誘うなど、とてもうまく出来たとは……」
「……」
「いや。疑ってばかりでは駄目だね。さあ、下だけ脱いで」
「……はぃ」
せっかく綺麗にしてきたと言うのに、これではそのままここに来たほうが良かったのではないだろうか……と思える。貴崎は彼の前で下半身を脱ぎ去ると上着をたくし上げた。
「後ろを向いて」
「はぃ」
言われた通り後ろを向くと背後から抱き締められてモノを握られる。
「どっちをした?」
「どっ……ちらも。言われた通り……」
「本当に?」
「はい」
「では後ろはまだ緩々、だよね?」
「はぃ」
「確かめるために入れても?」
「ぁ、はい」
答えると机に手をつくような姿勢になって脚を開く恰好を取らされる。そして後ろからニュルリと油を塗られたと思ったら熱くて太い彼の勃起したモノがスルリと入ってきた。
「ぁぁぁっ……」
「ああ。本当だ。ちょっと緩々してるかな……。ぁ、でもどうだろう……。私は若のモノを知らないからな……」
「本当ですっ。本当に私は主と……その……して来ましたっ」
「腰を振って」
「はぃ」
「もっと尻尾を振るように勢いよく」
「はぃっ。……ぃっ……ぁっ……ぁぁっ……んっ!」
「奥のどの辺を突いてた?」
「そっ……んなことっ……分かりませ……んっ! んっ! んっ!」
「前は? 触っていただいたか?」
「はっ……はぃっ」
「おしゃぶりは? ちゃんとしたか?」
「はっ……はぃっ、ちゃんと……ぅっ! ぅぅっ……ぅっ! んっ!」
「中出しは? ちゃんと中に種はいただけたのか?」
「はぃっ、ちゃんとっ……!」
「当分毎回確かめなければ信用出来ないな。次から終わったらそのまま報告に来なさい」
「はっ……はぃっ! わ……かりましたっ……ぁっ……ぁぁっ……ぁっ!」
しっかりと腰を掴まれて後ろからガンガン突き上げながら質問される。それにちゃんと答えていられたのかどうかも分からないまま確かめる作業は続いた。
片脚を持ち上げられてモノをしごかれると善がり声が収まらない。貴崎は主とは違う大人のモノの快楽を味わっていたのだった。
●
「君にしか出来ない使命がある」
呼び出されて言われた言葉に固まる。
「主人の種が広がらないように、この家では代々主に仕えている側近執事がそれを死守する役目を仰せつかっている」
「?」
「貴崎利翌。君は君の主である万城目砂王のためにその身を捧げよ」
「それは……私でなければならないのでしょうか……」
「側近執事とは誰のことだ?」
「私です……」
「だろ?」
「はい」
「では、選択権を与える。主人を満足させる役目を果たすか、この家から去るか」
「ぇ……」
「明日、返事を聞く。よく考えて答えてくれ」
「承知……しました……」
試読終わり。本編に続く。