タイトル「たとえば、これが俺の××」part2
たとえば。俺・津村砂鳴が、隣にいる三島鉄に「好きだよ」とか言ったらどうだろう……。
昼休み。立ち入り禁止の屋上に入り込んで二人っきりでパンを頬張る。
快晴の空は鱗雲が綺麗に広がっていて、心地いい風が頬をかすめていく。
「好きだよ」
「ああ」
「…………それだけ?」
「んだよ。物足りないのかよっ」
「ちょっと」
「じゃ、どう言えば気が済むんだよっ」
「え……っと……」
「俺も」とか「お前より俺のほうが」とか、いろいろ言って欲しいことはあったけれど、所詮それは夢に終わる。
「だいたいな、友達同士で好きも嫌いもあるかよっ。
好きだから付き合ってるんであって、嫌いなら一緒に飯も食いたくないって。そのくらい、お前分かるだろ?」
「ぅ、うん……」
それは分かってるんだけど、もう一回さっきと同じことを考える。
「あ! じゃあさ、今のもう一回言ってくれよ」
「えっ?」
「ほら、好きだから……っての。もう一回」
「えーーーっ」
奴の目の前で手を合わせて精一杯のお願いポーズを取る。だけど彼は嫌な顔をして身をそらせた。
「なーんで、そんなこともう一回言わなきゃいけないんだよっ!」
「そんなの決まってるじゃん。俺が聞きたいからだろ。なっ? なっ? お願いっ!」
「えーーーっ!」
それでも何か納得いかないぞ、と困り顔になる三島鉄。
可愛い。可愛い。可愛い。
「もう一回。なっ? もう一回」
しつこくコールを繰り返すと、恥ずかしそうに俯いた彼がボソボソと喋り始めた。
「好き……だから付き合ってるんだ……ろ?」
「……うっ…ひょぉぉっ〜い!」
勘違いしちゃっていい? ってくらい嬉しいぞ。
思わず小躍りしたくなったが、それよりも先に相手がスクッと立ち上がった。
「って! なーんで俺がこんなことで顔を赤らめなきゃならないんだよっ! だいたいお前がこんなこと言わせるからっ!」
「ウガガガッ!」と叫びながら拳を振り上げてゴリラみたいに地団駄を踏み始める。
完全に照れ隠しだ。
「三島鉄、可愛い。……ぁ」
思わず口に出してしまった。
「んだとっ?! もう一回言ってみろっ!」
一歩踏み出されて思わず立ち上がって逃げにかかる。
「うっひゃぁぁ!」
「お前ぇぇ、わざとだろっ! わざと言わせて楽しんでるだろっ!」
「わざとじゃないよっ!」
てか、わざとか。
照れて顔を真っ赤にさせた彼が追いかけてくる。
やっぱり、三島鉄は可愛いな。 終わり
「たとえば、これが俺の××」part2
20101029