タイトル「D幸村受」

D幸村受
「ぅ、うーん……。俺からは言いにくいんだけど……お館様は、謙信公のところに祝いの杯を持っていかれましたよ?」
「なっ! それは…どういうことだっ?!」
「どういうことって言われても……。たぶん一緒に飲まれるつもりなんじゃないですか?」
「敵…とかっ?!」
「まっ…敵と言っても、一時結託する可能性もありますしね。あのお二方は、良きライバル同士。どちらが勝っても祝福の……。って、どうしたんですかっ?! 何泣いてるんですかっ?!」
「………な…いてなど、おらぬっ! ただ…目から汁が出たに過ぎんっ!!」
 うるうるっ…と潤んだ瞳から涙がこぼれ落ちる。それを見られたくない幸村は、ゴシゴシッと目を擦ると、目の前の佐助を押しのけて教室を出た。
「ちょっ! 旦那っ!」
「捨ておけっ!」
「旦那ったらっ! ちょっ…待ってっ! 待ってくださいよっ!」
 慌てた佐助が後ろから追いかけてくる。追いつかれたくない幸村は足を早め、ついには走りだしていた。
「旦那っ! 旦那ったらっ!」
「くっ…」
 誰が待つかっ!
 自分の泣きっ面など誰にも見られたくなかった。たとえそれが佐助と言えども同じだ。と言うか、余計に見せたくない。


 幸村は闇雲に廊下を突っ走ると、普段は来ることもない別棟の教室に入り込んだ。
 ここで気持ちを落ち着けて、それから何食わぬ顔で家路につこう。そう思っての逃走だ。幸村は寒々しい教室で深いため息をつくと、近くの椅子に腰をかけ机に突っ伏した。
 悔しいっ…。
「何が、だっ………。くそっ…!」
 自分が何に対してそう思っているのかが分からない。ただ主人のために頑張ったのに、とんと関心を持たれていないような……。そんな寂しい気持ちになってしまっていたのだった。
「報われない、ですか?」
「なっ!」
 耳元でささやかれてガバッと体を起こす。すると後ろから佐助がギュッと抱き着いてきていた。
「さ、佐助っ?!」
「それを言うなら、俺だって十分報われないですよ?」
「なにっ…」
「俺サマなんて、いっつも指を咥えて見てるだけ。それがどんなに辛いか、旦那に分かります?」
「何をほざいておるっ。痛い、離せっ」
「………嫌ですっ」
「なっ」
「俺、決めました。今日は……あんたを落とすって」
「ぇ…………?」
 言われたことが最初はよく理解出来なかった。
「だっ…れに、何を申しておるっ?! 貴様は己が忍。命も受けておらぬのに、そのようなことっ!」
「だから言ったでしょ? あんたが決めるんじゃない、今日は俺が決めるって」
「うっ! あっ…!!」
 荒々しく身を反されて押し倒されると、勢いで机の上に背を付ける。一瞬佐助と向かい合った幸村は、次には体勢を立て直そうと相手に蹴りを入れながら身を翻していた。
「ぐふっ…! っ…くそっ…!」
「つぅぅ……!」
 床に片膝をついて勢いをつけると、出入り口までの通路を駆け抜ける。
「よしっ!」
 後もう少しでドアに手が届くところまで来た時、後ろから首に強い衝撃を受けて目の前が真っ暗になっていく。
「お……のれ…っ………」
「悪いね、旦那」
 そんな佐助の声を最後に幸村は気を失った。



「っ…ぅっ…………ぅ……」
「手間…かけさせないでくださいよ」
 かすかに西日が差し込んできている。幸村はボーッとする頭を振りながらゆっくりと目を開けて起き上がろうとした。しかし。
「………ぁ……?」
「悪いけど、逃げられないように縛らせてもらいましたよ」
「ぅ…………」
 確かに、言われてみれば四肢の感覚がおかしい。幸村は何度も頭を振りながら瞬きをして現状を確かめてみた。
「なぜ…このような………」
 幸村の体は、机の足に四肢を縛り付けられていた。まるで机を抱いているような感じだ。しかも下半身は、すでに脱がされ佐助の前に晒されていた。それを知った幸村の頬が朱に染まる。
「言ったでしょ、あんたを落とすって」
「こ…のようなことをして………何か楽しいかっ?!」
「何も楽しくないですよ?」
「……」
「でも、そうでもしないと手に入らないものだってあるんです」
「佐助…………」
 苦々しく言う佐助に少しだけ同情的になる。
 だけどそれもつかの間。尻の割れ目に指を這わされると体が緊張した。
「やめっ……」
「やめない。あんたが大将とするのをずっと見せつけられてきたんだ。その気持ち、分かるかい?」
「分かるかっ、そのようなことっ…! っ…ぁ………ぁ…」
 後ろから袋をやんわりと握られて、まだ萎えたままのモノをしごかれる。そしてもう一方の手を秘所に入れられて、幸村の腰は揺らいだ。
「ぅっ…ぁぁぁっ………! ぁっ…ぁ………ぅっ…」
「だろうな。しょせん忍は捨て駒。そこにいても心なんてないと思ってるんだろ? 何にも感じないって思ってるんだろ?」
「そのようなことは…、ご…ござらんっ! 佐助はっ……こ…この幸村……の忍……っ! たっ…楽しき時もっ……、つっ…らき時も、ともに死ぬまでっ……!」
「………またそんなこと言っちゃって」
「ま…ことのことっ! 佐助はっ…ぁ…某のものっ!」
「それでも俺は、あんたに触れることが出来ない」
「そ…れはっ……ぁ………っ…!」
「俺は旦那のことが好きなのに、こんな風にすることは愚か、手さえ握ることが出来ない」
「くっ……ぅぅっ……」
「辛いって言葉知ってる?」
「ぅぅ…」
「さっき知ったんだよね、たぶん」
「なっ…! なぜ…このように………某を苛めるっ…! くっ…ぅぅぅっ……!」
「苛める? 苛めてはいないですよ? 俺の気持ちを伝えているだけ」
 差し込まれていた指が引き抜かれると、次には佐助の熱い塊が秘所に宛てがわれる。
「あ……」
「だから……受け止めて欲しいんです。今、この一時だけでもっ」
 腰を掴まれて圧倒的な強さでモノが押し入ってくる。
「ううっ! ぅ…… ぁ…んっ! …んっ!…んんっ!!」
 幸村は抵抗出来ずに佐助のモノを受け入れるはめになった。
 後ろからガンガン攻められて結わえられた机ごと体が揺れる。幸村は必死で机の脚を掴みながら、その攻めを受けた。
「うっ! …うっ! …うっ…!」
「旦那っ……! あんたの中っ…熱いっ……!」
「ううっ…! うっ! ぁ…駄目だっ! 触るでなっ…ぁ…ぁ!」
 秘所への出し入れをされながら、前を弄られてしごかれる。幸村は口では抵抗していたが、体はそれとは反対にどんどん乱れてくるのを感じていた。だから朱に染まった頬がまた一層に赤くなる。
「いいねぇ…っ…! やっぱり旦那はっ……、中も外も…熱くて…っ…!」
「ばっ…馬鹿なことをっ……! は…やくイッてしまえっ……!」
「ふっ…。分かりましたよっ。ただし…中にっ…出しますからねっ……!」
「くっ…くそっ……!」
「うっ…! うっ……! うっ………っ…!」
「あっ! ぅっ…! うぅっ!」
 後ろから突き上げられればられるほど、無意識に自ら腰を差し出している。前ももっと触って欲しくて腰をくねらせてねだってしまう。幸村は自らの浅ましさを呪うしかなかった。



「嫌いだっ!」
 すべてが終わり。机緊縛から解放された幸村は、下半身そのままの姿で机に腰掛け佐助を罵った。目の前の佐助は、頭を垂れたまま床に跪いている。
「すみません。どう言われても仕方ないと思っています。でも」
「言い訳などするでないっ!」
「はいっ…」
「この幸村の、お館様に対する操…どうしてくれるっ……!」
「………如何様な処分も…受けるつもりでございます……」
「お前が、このようなことをするからっ! 某はっ………! 某の体はっ………! ええいっ! くそっ!」
 バンッ! と机を叩いてみるが、現状が変わるはずもなかった。
「………」
「腹立たしいっ………! どうしてくれよぅっ!」
「………腹でも切りますか?」
「馬鹿者っ!」
「……俺、自爆とか嫌ですからね。せめて屍は綺麗な死に方を選びたいって言うか……」
「誰がいつ、お前に死ねと申したっ!」
「ぇ………」
「某が怒っておるのは己が体っ!」
「……」
「感じてしまったのだっ!」
「ぇ…」
「お館様でもないのに、この体ときたらっ……! どうしてくれよぅっ!」
 ギュッと己の体を抱いてみるが、その体にはもはや主人の名残は感じられなかった。
「ちょっ…ちょっと待った。もしかして旦那、自分に怒ってるの?」
「当たり前だっ!」
「えぇぇっ…?!」
「お館様に仕えておると言うのに……この体、佐助に吸い付いて離れなかったではないかっ!」
「いやっ、いやいや。それは俺が無理やりしたからであって、けして旦那のせいでは」
 慌てた佐助が立ち上がって近寄ってくるが、それでも幸村は自分の身を抱きうつむいていた。
「しかしっ! 某、気持ち良かったのだっ!」
「いっ…いいんじゃないですかっ?! 自然ですよっ、それっ!」
「……………自然?」
 言われてハッとして顔を上げる。そこにはニッコリとほほ笑んだ佐助がいたのだった。
「そう。そうそうっ! 気持ち良かった。それ、いいことですっ! 俺も気持ち良かったしっ!」
「………それは良いことなのか? それでいいのか?」
「ええ。いいことですよっ!」
「しかし某は、お館様を満足させねばならぬ身。それなのに佐助のほうがいいなどと、口が裂けても言えんではないかっ」
「………言わなくてもいいんじゃないですか?」
「ぇ…?」
「別にプライベートまで言わなくてもいいんじゃないですか? 大将だって謙信公と会うのに忙しいんだし」
「………プライ…ベート……?」
「ええ。プライベート」
「ふむっ……。それも…そうか…………。本当にそうか?」
 不安になってもう一度聞くが、目の前の佐助はしっかりきっぱりと言い切ってくれた。
「ええ、絶対ですっ」
「……ふむ」
「それより今の、もう一度言ってくれませんか?」
「何を……だ?」
「佐助のほうがいいって」
「いっ…嫌だっ」
「旦那。お願いします」
「ぅ…うーん………」
「早く」
「さ…すけのほうが………いいっ……」
 言えと言われて口にしてみたが、やっぱり何だか恥ずかしい。幸村はまともに相手が見られずに思わず顔を伏せた。
「もう一度」
「…………佐助の……ほうが…いいっ……」
 言い終えるのを待って佐助の指が幸村の顎を捕らえる。
 顔を上げられると顔が迫ってきて唇が重なる。チュッとキスをして、それから舌で舐められて、差し出した舌を搦め捕られる。
「んっ…んんっ…ん……」
 そして二人は抱き合いながら再び机の上に横になっていったのだった。
終わり