タイトル「裕二と珊次」

 突然あいつがやってきたのは、冬の日差しが優しい昼下がりだった。
 ソファでまどろんでいると、ドアが開く音がして廊下の冷たい風が入り込んでくる。
 誰か…入ってきた……?
 ウトウトとしながらもう一度眠りにつこうと思ったけれど、見られてる。そう感じた俺は、眠い目を擦りながら顔を上げると……。
「………どうも」
「…どうも」
 そいつはいた。
 ドアを背に突っ立ってこっちを見ているそいつは、光に透けた少し長めの茶色がかった髪に細面の顔立ちをしていた。ちょっとツンとしているように見えるけど、俺がそいつを見つめると顔を反らすくせに、こっちを気にしているあたり案外可愛らしいのかもしれない。
 挨拶はいたって平凡。と言うか、素っ気なかったが、眠たかった俺はそいつを気にしながらも再び眠りについていた。

「お腹すいた。ねぇ、お腹すいたよ」
 ぐいぐいと肩を揺さぶられて眠りから冷めると、部屋はもう夕暮れの色に変わっていた。
「ごはん、欲しい」
「あ……ああ……」
 ボリボリと頭をかきながらソファから起き上がると、もたつく足でキッチンに向かう。
「とりあえずこれ飲んでろよ。今何か作るから」
 冷蔵庫から取り出した缶入りのジュースをそいつに放り投げると、ジャーの中の残りご飯を確認する。
 チャーハンでいいか…。
 フライパンを取り出すと手早くその辺にある野菜をみじん切りにしてその中に入れ冷凍してある肉をレンジで半分だけ解凍すると切り刻んでフライパンに放り込む。油を注いでコンロに置くと火をつけて炒めてご飯をぶち込み味付けをする。最後に卵を割り入れて取り出した皿に取り分けると、俺は自分の分とそいつの分を手にリビングに戻った。
 そいつは渡したジュースをチビチビと飲み、これよりもそっちの方が欲しいと言いたげな表情で俺を見た。
「ほら」
「ありがとぅ」
 ホカホカと暖かいチャーハンを手渡すと本当に嬉しそうな顔をして皿を受け取る。俺もそいつの近くに座り込んで作ったばかりのチャーハンを口に入れた。
「お前、名前は?」
「………珊次」
「さんじ?」
「うん。珊瑚の『珊』に『次』って字」
「ふぅん…。俺は裕二」
「ふぅん。裕二か…よろしくね」
「…ああ」
 とりとめもない会話をしただけでここに居座ることになった珊次に、俺は不快感とか全然感じなかった。むしろ一緒にいてくれる相手が出来たってことのほうが嬉しかった。

 珊次は食事を済ませると、俺がまどろんでいたソファに座ってうたた寝をし始めた。腹が満腹になったから寝るって感じだ。
「しょうがないなぁ…」
 仕方がないから寝室から毛布を引っ張ってくるとそいつ、珊次にかけてやる。それに丸まって寝ているあたりかなり可愛い。俺はほくそ笑みながら珊次の隣に座ると奴の暖かみを感じながらテレビを見た。
 夜も遅くなってきて、そろそろ風呂に入って寝る時間だ。
 もう寝ている珊次に「もう寝ろよ」と言うのもおかしくて、しばらく考えてから寝室に運ぶことにした。
「やっぱ同じくらい大きさあると女の子と同じってわけにもいかないな」
 ブツブツ言いながらも構う相手がいて嬉しい。俺は大きめのベッドにしておいて良かったとか思いながらも一緒になって布団に入り込んだ。
 風呂は…明日の朝でいいや。
 一緒に引っ付いてると、ついつい眠りに誘われる。
「お前…あったかいな」
 俺は珊次を抱きながら眠りについた。


 俺の腕の中でもぞもぞと動く物体がいる……。
「ぅ……ぅぅ……ん………」
 寝返りを打つと今度はそいつが後ろから抱き着いてきた。
「裕二…裕二……」
 名前を呼ばれて、あぁ…珊次がいたんだっけ……と朧げながら思う。奴の手が俺を抱き、後ろから体を密着させてくる。
「ぅ…ん……。なんだよ……」
「こっち向いてよ」
「ぅ…ん……」
 言われるまま珊次のほうに寝返りを打つと、奴は俺の胸に顔を埋めてすりすりしてきた。それがまた気持ち良くて……。そして奴が俺のシャツをたくしあげて素肌の胸の突起を舐め始めた。
「ぅ…ぅぅん……。そ…んなとこ舐めても吸っても乳は出ないぞ」
 目を瞑ったまま言うが、奴は何も言わずに乳を舐めたり吸ったりを繰り返してきた。
 そしてそれだけではつまらないのか、しばらくそれを続けると下半身にも手を伸ばしてきた。珊次はジーンズを必死になって脱がせると、下着の中から俺のモノを摘まみ出して躊躇なく舐め始めた。
「ばっ…か。何やってんだよっ…」
 パチッと目を開けると必死になって自分のモノを手で覆う。だけど珊次は俺の手をそこから退けようと自分の手を重ねてきた。
「…だって、したいんだもんっ」
「な、何を…?」
「乳繰り合い」
「なにそれ……」
「もっとはっきり言うならエッチ」
「エッチ…?!」
「そうだよ。そのために俺、来たんだもん」
「来たんだもんってお前……」
 唖然としてしまう俺だったが、珊次は驚いている俺の手をモノから退けると今度は下着をずり下げるとモノに食らいついてきた。
「なっ…ちょっと、お前ぇ……っ…!」
 カリッと甘噛みされて思わず体が硬直する。
「いいから俺にまかせてよ」
 俺のモノをしっかりと握った珊次は、唇を拭いながらにっこりと俺を見て笑った。
 脱力……。
「勝手にしろよっ! でも…俺、気持ちいいのは好きだけど、痛いのは絶対嫌だかんなっ!」
「分かってる。俺が勝手にする」
「ふぅん」
 いったい何をどうするつもりなのか。
 興味津々の俺は、脱力したまま大の字になって奴がすることをこの目で見てやろうとしていた。
 大の字になった俺の股の間に座り込んだ珊次は、自分も下半身だけ裸になるとさっそく俺のモノを口で咥えてきた。
「ん…んんっ……」
 その気になってるのか、珊次は俺のモノを咥えながらそんな声を出すとケツを突き出して自分の指を尻の穴に這わせて突っ込んでいる様子だった。
 腰をくねらせ自分の汁を穴につけながら指を突っ込む様は、見てて楽しかった。
「ん…ん…っ………」
 珊次を見てるとどんどん大きく堅くなる俺のモノ。珊次は腰をくねらせながら俺のモノを舐め、次には袋を舐めだした。
「おい…」
「いいから…まかせてよ……」
「………ふん…」
 ま、いいか……くらいの気持ちでもたげた頭を下ろすと、珊次は袋を口に含んでは出し、そのコロコロ感を楽しんでいる様子だった。
 俺は俺で、男にそんなことされた経験ないからそれを楽しんでいたんだけど、奴の舌が徐々に下のほうに行くのが気になってはいた。
「ん……ん……? お…まえ…どこ舐めて…ぁ…っ…」
「俺にまかせてって言ったじゃない。いいから黙って楽しんでなよ」
 珊次は袋の裏側を舐めて穴のほうに舌を伸ばしていった。
 脚を持ち上げられケツの穴まで舐められて、くすぐったさでいっぱいになる。
「な…んでそんなトコまで……。ちょ…くすぐった…ぁ…ぁぁっ…」
「ん…んんっ…」
 舌を使って穴を刺激して唾液を注ごうしてくる珊次。
 十分に濡らしてから指を差し入れられ、変な感覚に体がくねってしまった。
「指…入ってるだろっ…」
「うん。前立腺刺激してる。もう一本入れるともっと気持ちよくなる」
「そ…そうか……?」
 本当にそうなのかよく分からないままされていると、珊次は当然のように指の数を増やしグチュグチュと音が鳴るほど中を掻き混ぜはじめた。
「あ…ぁ…ぁぁ…な…なに…? なにやって……」
「気持ちいいでしょ」
「気持ちいい…かぁ?」
「いいはず。だって裕二悶えてんじゃん」
「ぇ……?」
 悶えてるって? 俺が?
 最初は珊次が何言ってるのかさえ分からなかったけど、気持ちいいと言われれば、だんだんその気になってもくる。
 そっか…これが気持ちいいって言うのか………。
 もにょもにょした感覚。
 ケツの中の珊次の指が、俺の内壁を探り続ける。俺は珊次に脚を担がれ、その快感にのたうちまわっていた。
「や…ぁ…ぁ…ぁぁ…んんっ…ん……」
 何度も何度もズブズブと指を抜き差しされて体が揺れる。
 時々忘れてないよと言うふうにモノを触られて、焦らされてまた悶える。
 俺は自分でモノをしごこうとしてやった手を取られ、珊次の首に回された。
「裕二は触っちゃ駄目。俺が全部するから。いい?」
「ぁ…ぁぁ……。だったら早く…」
 早くどうして欲しいのかも分からずにそんな言葉を口にする。もう俺は息もすっかり上がってしまっていて絶え絶えって感じだった。
「じゃあ、そろそろだね」
「ぇ…?」
 何がそろそろ……?
 そろそろ何をするのか。俺はうつろに目を開けて目の前の珊次に首を傾げた。
 奴は俺の中から指を引き抜くと、先走りの汁を垂らしている自分のモノを上下にしごいて俺の穴に押し当てた。
「ちょ…なにする…ぁ…ぁぁ……んっ…んっ……んんっ……」
 ズブズブと奴の勃起したモノが俺の中に入ってくる。
「ね、痛くないでしょ。俺のモノ、裕二のより細っこいから大丈夫だよ。すんなり入る」
「ぅ…ぁ…ぁぁ…」
 そ…んなことじゃない。な…んでお前が俺の中に入ってんだよっ! と涙目になった俺は賢明に目で訴えた。だってあまりの圧迫感に声らしい声も出なかったからだ。
「裕二のより細いけど、裕二のより長いから、奥まで届いて気持ちいいでしょ。こうやってズルズル入れて……ゴンゴン突くの」
「あっ…ぁぁ…! ぁぁっ…!」
 本当に言葉通りゴンゴン突いてきやがる。珊次の奴…こんなに乱暴なエッチしやがって…。後で絶対とっちめてやるぅ…!
 声にならない声を出しながら、俺は奴に揺さぶられていた。
 近づいてくる奴の顔がなんだか笑っているように見えるのは、俺が涙目になってるからか? いや、そうじゃない。実際笑ってるんだ、こいつ…。
「裕二…。気持ちいい?」
「ぁ…ぁ…ぁぁぁっ…」
 何とも言えない変な感じに逃げ腰になってる俺がいる。
「やっ…やめろったら…」
「駄目だよ。途中でやめられるわけないじゃん。もう少し…もう少ししたら俺、裕二の中に出すからっ…」
「えっ…」
 だ、出す? 出すって…つまりお前…俺の中で射精するのかよ!
 慌てた俺はジタバタともがいたんだけど、その時どうも尻の穴にも力を入れたらしい。
「うっ…!」
 低く唸った珊次は、俺の中に深くモノを突っ込んだままドクドクッと射精してきた。
「ぅぅっ……ぅ…」
 その感じ…何て表したらいいのか…。
 ゲンコツパンチを正面から食らうよりも気分的には衝撃だった。
 カルチャーショックって言うのか? 今まで体験したこともない、腹の中に吐き出される圧迫感と恐怖…みたいなものに俺はすっかり固まってしまった。
 それでも珊次の精液は俺の中に入ってくるし、珊次も途中でなんか止められっこないから仕方ないんだけど…こんなの有りか? って何度も自分に繰り返し聞いてみる。
「ばかやろ…あほ…ぼけ……カス…」
「って言われてもね……。俺は気持ちいいけど、裕二はそんなことない?」
「あるかよっ」
「そっかなぁ…。でも裕二のちんちんも汁垂らしてんじゃん」
「ぇ…」
 珊次に言われて手を伸ばしながら確かめてみると、確かに俺のモノは多少萎えてはいるものの勃起していた。
「ほんとだ…」
「だろ? だから俺がこうして中から刺激してやれば」
「ちょっ…お前まだ何か…ぁ…ぁぁっ…ぁ…」
「うん。まだ大丈夫。もう一回くらい出来るかも」
「やっ…もうやめろ…やめろったら……ぁ……」
 これ以上犯られたら…俺は…どうなるんだ……?!
 そう簡単にモノを抜こうとしない珊次に、俺はまた突き上げられて体を揺さぶられる。突っ込んだまま抱き上げられて、奴の上に跨がる格好になるとモノがあたる角度がさっきとまた変わる。
 珊次のモノは抜かずの二発目に突入して、串刺しの俺は奴にしがみつくしかなかった。
「ぁ…ぁ…ぁぁっ…やっ…ぁぁぁっ…」
「こんな格好でするのも気持ちいいでしょ。俺、色々知ってるから試してあげるね」
「ぇ…ぇぇ?! や…もういいっ…もういいったらっ…ぁ…ぁぁ…んっ…」
 腰を持たれながら珊次にグリグリ回される。自分の腰なのにそうじゃないみたいで、ガクガクと体が震えてしまうのを押さえられなかった。
「ぁ…ぁぁ…ぁっ!」
 二人の間で潰されてる俺のモノがガチガチになってドピュッと勢いよく射精した。
 な…なんで…?!
「ぁ…ぁぁ…っ…」
「あ、出ちゃった? 凄いね、触らないのに出せるんだ」
「ば…ばかっ…く…そっ……」
 泣ける。こんなことって……普通ないだろ……。しごいてもないのに……。
 半泣き状態で射精してビチョビチョになった腹を見つめてみる。まったく情けなくてしょうがない。
「お…まえのせいだぞ……」
「………そうだよ。他に誰のせいだって言うんだよ。そうなるようにしたんじゃん。裕二だって気持ちいいから出たんじゃん? ならいいじゃん」
「って、おまえぇ……」
 屈託なく言われると半泣きが本泣きになる。俺は奴に突っ込まれたまま、あまりに泣けてきて奴の肩に顔を埋めた。
 だけど珊次はそれをどう取ったのか、マジ泣いてる俺の背中をあやすようにポンポンッって優しく叩いてきたんだ。
 それって、どうよ……。どういう意味があるって言うんだよ……。
「そんなに泣くなってば」
「お…まえに、この気持ちが分かるか……」
「分かんない」
「……そうだろうよ。おまえみたいな奴に…いいようにされてさ、……結局俺、ヘロヘロメタメタじゃんかよぉ……」
「うん。そうなるようにしたんだし」
「ばかやろうぅ……」
 回している手で珊次の背中をバシッと叩くけど、珊次は俺の背中をさっきと同じようにポンポンッと叩いてきた。きっと奴の顔は今笑顔だ。
「今日は俺、裕二のことヘロヘロにしちゃったからさ。今度する時は、裕二が俺をヘロヘロにしていいから」
「へ……?」
 それってお前、俺のモノ入れれるってこと……?
 びっくりして顔をあげると、案の定珊次の顔は笑顔だった。
「いいのか…?」
「…いいよ。元々俺、そのつもりだったんだけど、あまりに裕二が可愛いから食べてみたくなっただけ。裕二さ、俺に入れたきゃ、いつでも入れていいよ。俺、そういうのも好きだし」
「………」
 今こいつ、「そういうのも」って言った…よな? ってことは、俺がこいつにしたら、こいつも俺にするって言う宣戦布告みたいなもの? って考えると、俺の顔はとたんに引きつってしまった。
「なに? 裕二は俺に入れたくないの?」
「い…いや……」
「じゃ、入れたい?」
「ぅ…ぅんまぁ…」
 入れられるより入れたいって言うか……。
 でも交換条件みたいなの出されるのが嫌な俺は、あいまいな返事を繰り返すしかなかった。
 こいつって……何考えてるか分かんない……。
 俺の頭はちょっとパニックだ。


「綺麗にしてあげるね」
 言われてケツやモノを舐められて、そのくすぐったさにコロコロ転がりそうになるのを押さえ付けられる。
「も…やだっ…な…んでそんなに……」
「いいの。俺、裕二好きだし」
「ぇぇ…?」
「好き。裕二は?」
「………分かんないよ、そんなの……って、こら…舐めるなっ…」
 ペロペロってよりレロレロって感じで舐められると、どこ舐められてもくすぐったい。
「もぅぅ……」
 体をくねらせてると玄関のドアが開く音がした。
「あっ…!」
 俺はモノを舐めてる珊次を押しのけると、小走りで玄関に向かった。
「おかえりぃー! お帰り、イチローッ!」
 玄関では靴を脱ぎかかっている俺の主人・イチローがいた。
 イチローは背も俺より高くて、肩幅も俺よりあって、髪の毛も亜麻色で、声も甘くて…とにかくカッコイイんだっ。
「お、来たな。ただいま。いいコにしてたか?」
「うんっ。いいコにしてたっ! あのね、あのね、」
「あ、ズボン履いてないじゃないか」
「あぁっ! あっ、そう! 珊次っ! 俺、珊次に犯られたっ! 犯られたんだよ?!」
「珊次?」
「そう! 珊次!」
「もう来たのか、早いなぁ」
 俺の話を聞きながらリビングに足を向けるイチローは、珊次の名前を聞いても全然驚かなかった。
「珊次」
「あ、イチロー」
「なんだ、やけに早いな。明日来るって聞いてたのに」
「うん。お店に聞いて自分で来た」
「そうか。手間が省けて良かったよ」
「ねえねえ、イチロー! 俺の話聞いてよっ!」
「うんうん、分かったよ裕二。まずは座って」
「ぅ…うん……」
 イチローがそう言うから、俺は珊次と一緒にイチローの前に正座した。
「まず、こちらが珊次。そしてこちらは裕二。そして俺は?」
「イチロー!」
 俺と珊次は二人して同時に同じ言葉を叫んでいた。それを聞いたイチローはニコニコッと笑顔を作ると、二人の頭を優しく撫でてくれた。
 素直に嬉しいぃ。
「へへへっ…」
「今日からみんな一緒に暮らすことになった。意地悪しない。いいね?」
 俺と珊次、両方の顔を交互に見ながら言うイチローにコクコクッと首を縦に振る。
 珊次も、俺ほどじゃないけど首を縦に振っていた。
「よし、いいコだ。…にしても何だ? 二人ともチンコ丸出しだそ?」
「あっ! そう! 俺、珊次にチンコ入れられたっ!」
「ぇ………。珊次…本当に?」
「うん」
 イチローに聞かれた珊次は、戸惑うことなく首を縦に振った。悪いって意識がないんだと思う。
「どうしてまた…」
「だってここには裕二しかいないもん。仲良し・いっしょ・楽しむ」
「そっか…。でも、そういうことは、裕二にちゃんと『してもいい?』って聞いてからじゃないと駄目だよ?」
「うん。でも気持ちいいはず。裕二、ちんちんから白いの出たもん」
「あ、そぅ…」
 ポリポリと頭をかくイチローを見た俺は、がむしゃらにイチローに抱き着いていった。
「イチロー。俺、イチローだけ! イチローが好きっ!」
「裕二…」
「俺だってイチロー好きだもんっ! 珊次もイチロー好きっ!」
 二人して抱き着いたので、その勢いでイチローは後ろに引っ繰り返ってしまった。
「おいおいっ、二人とも……。いいかい? 言っただろ? これからはみんな一緒だ」
「…うん」
「裕二。今まで俺が働きに行ってる時は一人で寂しかっただろうけど、寂しくないように珊次に来てもらったんだ」
「……ふぅん……」
「珊次。珊次にもそれ、最初に言ったよね」
「うん」
「これからはみんなで一緒に暮らして行くんだよ。エッチはしてもいいけど、あんまりすると体に毒だからね?」
「どく?」
「体に悪いってこと。だからほら、二人ともちゃんと服着て。チンコ隠す」
「うん」
 イチローに言われてちゃんと服を着た俺たちは、食事を作りにかかるイチローに纏わり付いて、今日あった出来事を話したり聞いたりした。
「じゃあ……ご飯食べたらみんなで散歩にでも出掛けるか?」
「うんっ!」
「うんっ! 行くっ!」
 俺と珊次は同時に大きく返事をすると、ニコニコ顔で首輪を取りに走った。
 そう。俺たちはイチローから見たらただの犬っころなんだ。でも十分可愛がられてる犬なんだと思うよ。だって俺たちは今、ほら、こんなに幸せだから。
終わり